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水陸両用まるでボンドカーの「770」が約950万円で落札! ボートとクルマを別々に買うよりリーズナブルな「アンフィカー」とは

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TEXT: 武田公実(TAKEDA Hiromi)  PHOTO: 2023 Courtesy of RM Sotheby's

リーズナブルな(?)約950万円で落札

このほどRMサザビーズ「ARIZONA 2024」オークションに出品されたアンフィカー770は、発売当時4色が設定されていたファクトリーカラーのうちのひとつ、「ラグーンブルー」で美しく仕上げられており、外装のレストアから約15年が経過した現在でも、ボディワークは非常にしっかりとしたコンディションを保っている。

ボディパネル、特にフロアの錆びや腐食に悩まされ、多くの個体が失われてしまったとされるアンフィカーとしては、これはとても重要視されるべきポイントであろう。

最近では、8年来にわたりこのクルマを所有してきた熱心な現オーナーによって、オンタリオ州南西部の海域でデモンストレーション走行が行われ、「オンショア」でも「オフショア」でも良好なパフォーマンスを発揮したばかりとのことである。

また、ここ数年の間にクロームの一部が再メッキされたほか、タイヤ2本、ブレーキとブレーキライン、ベアリング、排水ビルジポンプ(1つは自動式、もう1つは手動式)、スターターモーターと燃料ポンプも新品に交換。その際の請求書も、今回の出品で添付されるファイルに残っている。

くわえて、アンフィカー用の部品はカリフォルニア州の「ゴードン・インポート」社から今でも簡単に入手できるそうだが、この個体にはオリジナルのマニュアルにパーツブック、広告、ツールキット、オール2本、アンカー、消火器が付属しているとの由である。

このオークション出品に際して、RMサザビーズ北米本社は現オーナーとの協議のうえ、7万ドル~9万ドルのエスティメートを設定。その上で「Offered Without Reserve」、つまり最低落札価格は設定しなかった。

この「リザーヴなし」という出品スタイルは金額を問わず確実に落札されることから、特に人気モデルではオークション会場の雰囲気が盛り上がり、ビッド(入札)が進むことも期待できる。ただしそのいっぽうで、たとえビッドが出品者の希望に達するまで伸びなくても、落札されてしまうというリスクも二律背反的に持ち合わせる。

そして迎えた競売では、エスティメート下限を少し割り込む6万4400ドル、日本円にして約950万円で落札されることになった。

超レア車ゆえに、国際マーケットにおける販売事例も少ないアンフィカーながら、数年前には10万ドル前後での取引もいくつか行われていた。そのため今回のオークション結果は落札者にとってはリーズナブル。そして出品者にとっては、いささか不本意なものだったと考えられる。

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  • 武田公実(TAKEDA Hiromi)
  • 武田公実(TAKEDA Hiromi)
  • 1967年生まれ。かつてロールス・ロイス/ベントレー、フェラーリの日本総代理店だったコーンズ&カンパニー・リミテッド(現コーンズ・モーターズ)で営業・広報を務めたのちイタリアに渡る。帰国後は旧ブガッティ社日本事務所、都内のクラシックカー専門店などでの勤務を経て、2001年以降は自動車ライターおよび翻訳者として活動中。また「東京コンクール・デレガンス」「浅間ヒルクライム」などの自動車イベントでも立ち上げの段階から関与したほか、自動車博物館「ワクイミュージアム(埼玉県加須市)」では2008年の開館からキュレーションを担当している。
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