過激なターボやカブリオレと、バリエーション豊富だった元祖トールボーイ
初代ホンダ「シティ」は1981年にデビューしました。あの頃、多感な幼少期を過ごした方々は、当時テレビで流れていた「シティ」のCMを見て、“ムカデダンス”をマネして遊んだ人も多いでしょう。イギリスのスカバンド、マッドネスの“in the city”という楽曲の軽快なリズムに合わせて踊るメンバーと、“FF 1200cc”、“20.0km/L” というキャッチフレーズ。そして、街に佇む赤い「シティ」。あれから40年以上の時間が経っても、このCMが当時のお茶の間に大きな衝撃を残しました。この時に愛車を手に入れて以来、今でも所有し続けるオーナー、大手久幸さんとその愛車「シティ カブリオレ」をご紹介します。
経済性に優れた可愛い小型車
「ネオクラシックホンダミーティング2023」の会場には、たくさんのホンダ「シティ」が参加していた。小型車で居住空間を確保するための屋根が高いデザイン。いわゆるトールボーイと言われるスタイルは、現代では軽自動車も含めて一般的な外観だが、「シティ」が発売された当時は斬新だった。しかも、排気量1200ccで車重はたったの655kg。最初に登場した67psのNAエンジン搭載車で、20.0km/L(当時のメーカー公表値)という驚異的な高燃費とあのキャッチーなCMで、瞬く間に大ヒットした。
しかもその翌年の1982年にはさらに低燃費仕様の「EI」、ターボチャージャー付きの「ターボ」、ハイルーフ仕様の「マンハッタンルーフ」が登場。1983年にはインタークーラーターボを搭載した「ターボII(ブルドック)」、1984年にオープン仕様の「カブリオレ」と、1986年の生産終了まで、累計31万台を超える販売台数を記録したホンダの大ヒット商品だった。
雑誌のスクープ情報を見て、正式発表前にディーラーに駆け込んだ
このイエローの「カブリオレ」のオーナー、大手久幸さんは、もう1台の愛車「ターボI」を1982年当時に新車で購入し、今でも所有しているそうで、この「カブリオレ」と共に2台の初代「シティ」と「モトコンポ」で、ネオクラシックなカーライフを楽しんでいる。
「発売当時から欲しかったんですが、ちょっと様子を見ていたんです。その後、雑誌でシティターボの記事を見かけて、それに試乗したくてディーラーに駆け込みました。でも当時の担当者は、そんな情報はまだ入ってきていないから、そもそもクルマは無いと(笑)。私はどうしても欲しくて、発売されるという予測の元で、ディーラーに予約を入れてきました。そのおかげで、私が住む長崎県内で最初に納車してもらえたのです」
勇み足での新車予約だったものの、結果はオーライ。そして、そこからが今に至るまで「シティ」との長い付き合いがはじまったのだ。その後、この「カブリオレ」も入手。こちらは1984年式で、エンジンはノーマルのNAから、ターボII用のインタークーラーターボ付きへと変更。可愛らしい見た目とは対照的に、オープンカーでも楽しい走りが楽しめる仕様にバージョンアップしているのだ。
本田宗一郎のカリスマ性とF1ブームでホンダの虜に
そもそも大手さんが「シティ」に興味を持つきっかけとなったのは、ホンダというメーカーが魅力的だったからだ。
「創業者の本田宗一郎さんの情熱や、アイルトン・セナのF1での活躍。友人がS800を所有していて、それに乗せてもらってエスハチの楽しさも実感しました。そういういろいろな影響から、ホンダが好きになっていきましたね」
ちなみに、ホンダ党としての誇りは、日常使いの車両が現行「シビック」であることからも、よく理解できるだろう。もちろん、「シティ」オーナーにとっては必然でもある「モトコンポ」も所有。この日は、友人達と共にミーティング中に「モトコンポ」でプチツーリングに出かけるなど、イベントを全力で楽しんでいたのが印象的だった。
「本当はね、モトコンポには興味がなかったんです。だから、当時は購入していないんですよ。でも、シティといったらやっぱりコレが無いといけんということで、知人から譲ってもらいました。一時期は2~3万円の格安バイクだったのに、今ではゼロがひとつ増えちゃいましたからね。部品取りと合わせて2台ありますが、これも大切にしないと!」
「ターボI」と「カブリオレ」、2台の初代「シティ」は、ホンダ愛に溢れるオーナーさんの元で大切にされているのだ。