ライバルよりも完成度が高かった「918スパイダー」
2024年1月25〜26日、RMサザビーズがアメリカ・アリゾナで開催したオークションにおいてポルシェ「918スパイダー」が出品されました。同車について振り返りながらお伝えします。
車名の「918」にちなんで918台が生産された
2010年3月に開催された第80回ジュネーブ・ショーで、ポルシェは1台のミッドシップ・コンセプトカーを発表した。918スパイダーとネーミングされ、その姿が明らかになるや世界中のスーパースポーツマニアに大きな衝撃を与え、ポルシェは2010年7月末までに購入希望者が2000人を超えたのを機に、役員会議においてそのシリーズ生産を承認。生産は2013年9月18日から開始され、実際のデリバリーは2014年からとなった。
生産台数も車名にちなんで918台とすることなどが決定されたのである。参考までに販売開始当時の価格は78万1000ユーロ(邦貨換算約1億934万円)。2014年にはその全車が完売し、2015年6月には生産が終了している。
ここで紹介するのは2015年式の918スパイダーである。918台のうち834番目ということになるから、その生産の最終期にデリバリーされたモデルだ。デビュー前の予想どおり、ポルシェ918スパイダーの完成度は非常に高いものだった。
直接のライバルにはマクラーレンP1やラ フェラーリの名が挙げられ、これらのモデルはいずれも最新のエレクトリック・パワートレイン技術を採用していたが、ポルシェはそれをただ単にサーキットを走るためのハードエッジな武器ではなく、非の打ちどころのないビルドクオリティと日常での真の使いやすさに重点をおいて開発。したがって競合車と比較した場合、EV走行によるゼロエミッション走行距離は最大、またCO2排出量、燃料消費率のいずれにおいてもその数値が最も少ないこともまた大きな特長だった。
もちろんその代償としてパフォーマンスが犠牲になることはなかった。ほぼ全体が軽量なカーボンファイバー素材で構成されるシャシーのミッドには、ル・マン・プロトタイプ・レーシングカーのRSスパイダーのそれをベースとした4.6LのV型8気筒自然吸気エンジンが搭載されたが、これは、ボアは95mmのままにストロークのみを81mmに延長することで4.6Lの排気量を得たものである。
最高出力の608ps、最大トルクの540Nm、そしてレブリミットの9200rpmはこれだけでも十分に魅力的なスペックといえるが、ポルシェはこれに156psのエレクトリックモーターを並行して組み合わせたほか、フロントにも129psの最高出力を誇るエレクトリックモーターを配し、前輪を駆動した(それを使用しない時は電気クラッチがモーターを切り離す仕組みだ)。結果、システム全体の最高出力は887psをスペックシートに掲げている。
参考までに918スパイダーには2タイプの走行モードがある、約26kmのEV走行を可能にする「E-Drive」、ハイブリッド走行を行う「ハイブリット」と同じく「スポーツ」、そして「レース」のそれぞれだ。レースモード使用時には、パス・ボタンをプッシュすることでさらに高いモーター出力を得ることもできる。0-100km/h加速で2.5秒、最高速では345km/hという数字は現在でも大いに魅力的だろう。