ヒーレーが造った5番目のプロトタイプ車両
去る2023年10月29日に富士スピードウェイを会場として『POWER&TORQUE』という名のイベントが開催され、その中で箱車レーシングカーの走行枠が設けられました。『箱車の祭典2023』と銘打って実施された走行枠に参加していた、オースチンヒーレー「タルガフローリオ レーシング5」を紹介します。
箱車の祭典とは?
1990年までの純レーシングカーによるClass1と、1990年までの市販車ベース車両によるClass2が設定され、前者はGr.CカーやGCカーなど、後者はツーリングカー、TS、ワンメイク車両などが対象となった。
第51回タルガフローリオに参戦したワークスマシン
Class1にエントリーした1967年式のオースチンヒーレー「タルガフローリオ レーシング5」は、かつてイタリアのシチリア島(シシリー島)で行われていた公道レース、タルガフローリオに参戦するためにヒーレーが造った5番目のプロトタイプ車両だ。兄弟車種がいくつか存在しているが、このモデルは1台のみとなるワークスカーとなる。
このサイズのオースチンヒーレー製レーシングカーといえばスプライトをべースとしたモデルが有名だが、プロトタイプ車両のタルガフローリオ レーシング5もその流れを汲むマシンだといえ、飛び切りスペシャルなオースチンヒーレー スプライトと呼んでいいだろう。
オーナーの田中 茂さんによると20年ぐらい前に購入したとのことで、MG-Bのレースカーからオースチンヒーレー スプライト レーシングおよびヒルマンインプ レーシングに乗りかえ、その後、今回の箱車の祭典で走らせたタルガフローリオ レーシング5を入手。現在、ヒルマンインプ レーシング、タルガフローリオ レーシング5、マーコス1600GTのレースカーという3台を愛用しているそうだ。
フロントに描かれているレジストレーションナンバー“LWD 959E”のタルガフローリオ レーシング5は、既述したようにワークスカーだった。1967年に開催された第51回タルガフローリオにBMC(ブリティッシュ・モーター・カンパニー)のワークスドライバーだったクライブ・ベーカーのドライブで出場している。
その翌年にエンジンが大幅に改良されて8ポートインジェクションを採用し、ニュルブルクリンク1000kmやセブリング12時間レースといったロングディスタンスの耐久レースに出走するようになった。現在、1968年のニュルブルクリンク1000kmに参戦した際の仕様となっており、ドライバーはもちろん、見る者もレーシーな雰囲気を楽しめるのであった。
箱車の祭典でも素晴らしい走りを披露してくれたが、富士スピードウェイのヘアピンの手前でクラッチが抜け、2速で止まってしまったらしいのだ。田中さんは「2速で止まってしまいましたが、ダメもとで1速にシフトチェンジしてみたら入り、2速にも入ったので、ピットまで戻ってくることができました」と話してくれた。
今回は残念だったが、ヒルマンインプ レーシング、タルガフローリオ レーシング5、マーコス1600GTのレースカーという3台を愛用している田中さんはサーキット走行に慣れているだけでなく、レーシングカーをメンテナンスする際の勘どころも分かっているので、難なく復活させ、次戦も熱い走りでギャラリーを魅了してくれるだろう。