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世界にたった26台! 4800万円で落札されたフランク・シナトラもオーダーしたギア「L 6.4」とは

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TEXT: 武田公実(TAKEDA Hiromi)  PHOTO: 2023 Courtesy of RM Sotheby's

 

“世界最長の組み立てライン”で作られたグラントゥリズモ

デュアル・ギアD-500は成功には至らなかったものの、そこでリベンジを期したギアと、「デュアルモーターズ」社オーナーのユージン・カサロールはリベンジを期して、1961年に「ギアL 6.4」と名づけられたファストバック・クーペを発表する。

ギアL 6.4は、完全なオーダーメイド製作のクーペ。ボディデザインはヴァージル・エクスナーが担当するいっぽう、コーチワークはすべてカロッツェリア・ギアが行い、デトロイトのデュアルモーターズがディーラーとして販売するというシステムは、デュアル・ギアD-500と同じだった。

パワーユニットとして選ばれたのは、有名な「MOPAR(モパー)」部門から供給される383キュービックインチ(約6280cc)のクライスラー系V型8気筒で、335ps(SAE規格)をマーク。のちに「アストンマーティンDBS/V8」などにも採用されたことで知られる、クライスラー「トルクフライト」3速オートマチックトランスミッションが組み合わされた。

すべてハンドメイドで製造されたギアL 6.4は、間違いなくこの時代における世界最高級車のひとつだった。デュアル・ギアD-500 が7500ドルで販売されたのに対して、1万3000ドル以上という驚くべき価格で発売されることになるのだが、それにはやむを得ない理由があったようだ。

ダッジのフレームとドライブトレインをデトロイトからイタリアに輸送し、トリノにあるギアのコーチビルダーが、ボディワークとインテリアを架装。そして完成車はアメリカで販売するという「世界最長の組立ライン」に伴う生産コストと複雑さのために、L 6.4はわずか26台のみの製造・販売に終わってしまう。

それでも、フランク・シナトラやルシル・ボール、ディーン・マーティンなどの名だたるセレブレティがオーナーリストに名を連ねるなど、イタリアとアメリカの「ハイブリッド・グラントゥリズモ」時代の終幕を飾るカスタムボディが与えられた1台として、今なお伝説的な存在となっているのだ。

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