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なぜ日産「ティーダ」は「上質なコンパクト」を実現できた? 細部まで配慮の行き届いた室内デザインには理由がありました【カタログは語る】

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TEXT: 島崎 七生人(SHIMAZAKI Naoto)  PHOTO: 島崎 七生人(SHIMAZAKI Naoto)

クリーンで大らかなプロポーションも印象的だった

それはエクステリアデザインにも当てはまった。前出Nさんの言葉を借りれば「唐辛子のような赤いテールランプ」がアクセントだった外形は、装飾的なキャラクターラインを極力抑えた、クリーンで大らかな面で構成されている点が特徴だった。

そのうえで全高535mm(e・4WD車は1540mm)と高いプロポーションは、5ナンバーサイズのコンパクトなクルマながら、見るからに室内空間のゆとりを感じさせるものだった。とくにリアシートは240mmものストロークのスライド機構と10段階40度のリクライニング機構を備え、運転席もラチェット式(電動の設定もあった)で60mmの高さ調整が可能と、室内空間をフルに活かしたしつらえを備えていた。

セダン版のティーダ ラティオもゆとりある空間が自慢

ちなみに2600mmのホイールベースはティーダと共通で、全長をティーダ+190mmの4395mmとし、独立したトランクを設けてノッチバックセダンに仕立てたのがティーダ ラティオ。こちらは今カタログを見返すと、トランクルームは「467L(VDA容量)もの広大なスペース」とだけ記述があり、意外にもトランクスルー機構はなかったようだ(実車に試乗した際の記憶もない)。ドアの開口部形状は2ボックスのティーダのほうが乗降に有利だったものの、後席左右のクリアランス(座面から天井までの高さ)は図面で読む限りセダンのティーダ ラティオのほうが2ボックスのティーダよりも数値上20mm余裕があり、ティーダ以上に、セダンらしいゆとりのある空間が作られていたものと思われる。

* * *

冒頭のほうで挙げた車名のうち、現存するのはノートのみ。いかにも寂しい限りだが、それも時代の流れということか。……と原稿を書きながら、今のノート/ノートオーラに、なんとなくであるがティーダの楚々とした雰囲気に、時代が何周か回って通じるものがある……とも思ったのだが、どうだろうか?

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  • 島崎 七生人(SHIMAZAKI Naoto)
  • 島崎 七生人(SHIMAZAKI Naoto)
  • 1958年生まれ。大学卒業後、編集制作会社を経てフリーランスに。クルマをメインに、写真、(カー)オーディオなど、趣味と仕事の境目のないスタンスをとりながら今日に。デザイン領域も関心の対象。それと3代目になる柴犬の飼育もライフワーク。AMWでは、幼少の頃から集めて、捨てられずにとっておいたカタログ(=古い家のときに蔵の床が抜けた)をご紹介する「カタログは語る」などを担当。日本ジャーナリスト協会会員、日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。
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