見た目は“同じ”だが実はまったくの別物
まず、フラッグシップモデルの「i5 M60 xDrive」に試乗した。パワートレインは、前輪に最高出力261ps(192kW)を発揮する電気モーターを、後輪に最高出力340ps(250kW)を発揮する電気モーターを組み合わせた4輪駆動のMパフォーマンスモデルだ。システムトータルでの最高出力は601ps(442kW)、最大トルクは820Nm。駆動用リチウムイオンバッテリーの総容量は83.9kWhで一充電あたりの走行可能距離は455km(WLTCモード)となっている。
600ps&800Nmと聞いておそるおそるアクセルを踏んでみたが、急加速するような過激な演出はされていない。違和感なくナチュラルに走る。もちろん望みとあればステアリングに備わるMスポーツ・ブースト機能を使えば、0-100km/hは3.8秒というものすごい加速が味わえる。Mパフォーマンスモデルだけあって、サスペンションはスポーティな仕立てとなっており、荒れた路面では少し硬いかなと感じる場面もあった。本領を発揮するのは高速道路だ。バッテリーの重さを速さに転換するかのように、重量バランスや駆動制御のよさを存分に活かし抜群のスタビリティを発揮する。速度域があがるほどに安定感が増していくようだ。
もう1台、523iにも乗った。新世代のモジュール式2L 4気筒ターボエンジンは、48Vマイルドハイブリッドシステムを組み合わせ最高出力190ps(140kW)、最大トルク310Nmを発揮する。4気筒エンジンで200ps以下と聞くと、物足りなく感じてしまうかもしれないが、実際にはそんなことはまったくない。i5から乗り換えて感じるのは、その軽さだ。車両重量はi5 M60が2380kg に対して523i は1800kg。じつに580kgもの差がある。パワーは3分の1以下ではあるが、BMWらしいコンフォート性とスポーティさをかね備えている。
そして燃費は14.4km/L(WLTCモード)とこのクラスにしては優秀で、高速道路ではこの数字よりもさらに良好な燃費がメーターに表示されていた。また一定の条件下でステアリングから手を離しての走行が可能な「ハンズ・オフ機能付き渋滞運転支援機能」や、最先端の運転支援システム「ドライビング・アシスト・プロフェッショナル」を標準装備しており、使い勝手がよい。
気になる車両価格は、523i Exclusiveが798万円(消費税込)、i5 M60 xDriveが1548万円(消費税込)。パワー3倍で、お値段は約2倍。見た目は同じ5シリーズだけれど、その実はまったくの別物だ。電気自動車か内燃エンジン車か、BMWがつくると、どちらにもそれぞれの“駆けぬける歓び”があるのがおもしろい。