10台製作されたうちの1台
去る2023年10月29日に富士スピードウェイを会場として『POWER&TORQUE』という名のイベントが開催され、その中で箱車レーシングカーの走行枠が設けられました。『箱車の祭典2023』と銘打って実施された走行枠に参加していたオースチンヒーレー「ル・マン スプライト プロトタイプ」を紹介します。
箱車の祭典とは?
1990年までの純レーシングカーによるClass1と、1990年までの市販車ベース車両によるClass2が設定され、前者はGr.CカーやGCカーなど、後者はツーリングカー、TS、ワンメイク車両などが対象となった。
日本には3台のル・マン スプライトがある
Class1にエントリーしたオースチンヒーレー「ル・マン スプライト プロトタイプ」は、オースチンヒーレー社がル・マン24時間レース用に製作したワークスプロトタイプマシンで、1965年のル・マン24時間レースにて総合12位に入り、クラス優勝を果たしている個体だ。
箱車の祭典に参加したオースチンヒーレー「ル・マン スプライト プロトタイプ」は既述したように1965年式で、このボディが架装されたル・マン スプライトは10台(9台という説もある)ほど製作されたといわれており、日本には現車を含め、3台が生息しているのだという。
「2002年にスタートしたル・マン クラシックに参戦するために、1965年のル・マン24時間レースに出たル・マン スプライト プロトタイプを購入しました。2002年の第1回大会だけでなく、2004年にもル・マン クラシックに出ましたが、そのときは2002年の経験でもう少し速いマシンが必要だと思っていたこともあり、ル・マン スプライト プロトタイプではなくローラGTで参戦しました」
そのように話してくれたオーナーの鈴木英昭さんによると、箱車の祭典で走らせたル・マン スプライト プロトタイプは2020年に購入したが、2002年に買ったもう1台のル・マン スプライト プロトタイプも愛用しているらしく、そちらは基本的にル・マン仕様と同じだが、セブリング12時間レース用のセッティングになっているそうだ。
「1966年にセブリング12時間レースに出たル・マン スプライト プロトタイプのTカーで、レース後にアメリカのディーラーに売られ、それがオークションに出てきたので買いました。いま、他にもいろいろ持っていて、ブラバムBT5、BT8、ローラT212、フォードGT40なども所有しています。今回、富士スピードウェイを久しぶりに走りましたが、4~5周走ったら異音が発生し始めたのでピットに戻ってきました。袖ヶ浦フォレストレースウェイ用セッティングのままだったので、富士スピードウェイの長いホームストレートで吹け切ってしまいました」
珠玉のクラシックカーを販売するスペシャルショップの代表として宝石のような旧き佳きイタリア車やイギリス車をユーザーに提案しつつ、自身では本物のクラシックレーシングカーを走らせ、その楽しさも伝えている鈴木さんは、日本におけるクラシックレーシングの指南役だ。これからもわれわれにクラシックレーシングカーならではの迫力ある咆哮を聴かせてくれるだろう。