NSXよ、永遠に……
2023年のSUPER GT最終戦をもって、ラストレースとなったホンダ「NSX-GT」。レース前には2000年にチャンピオンを獲得したカストロール無限NSXがデモランを行い、後輩である2代目NSXのラストレースに花を添えました。これまで歴史に残る名バトルの多くを展開してくれたNSX-GT。そこでNSXにゆかりのあるドライバーたちに、思い出を語ってもらいました。
優勝は逃したものの記憶に残るバトルだった
SUPER GT 2023シーズンの最終戦、17号車Astemo NSX-GTの塚越広大と松下信治組が、チャンピオンを争うau TOM’S GR Supraと、20周以上にわたる激しいバトルを披露。多くのファンを沸かせた。残念ながら優勝こそならなかったAatemo NSX-GTだが 、トップ走行車両がコースオフしたことで3位へ昇格。NSXのラストレースで、表彰台の一角をもぎ取って見せた。まずはその塚越選手からNSXとの思い出を語ってもらおう。
No.17 Astemo NSX-GT/塚越広大 選手
僕が最初にNSX-GTに乗ったのは、2007年のホンダサンクスデーのリハーサルで助手席でした。ツーリングカーとは思えない鋭い動きと車内のサウンドに興奮しましたね。その翌年の鈴鹿1000kmでスポット参戦して、2009年にリアルレーシングのレギュラーシートが獲得できました。子供のときから憧れていたクルマで、レース活動ができるなんて夢のようでした。一番記憶に残っているレースは2014年のSUGOです。この年は2代目NSXの初年度で、ハイブリッドシステムを搭載していたのですが、熱害の問題で開幕戦から苦戦続きでした。その対策を施した最初のレースで3位表彰台を獲得できたので、嬉しかったです。NSXは長い間レースを共にしたかけがえのない戦友です。
No.64 Modulo NSX-GT/伊沢拓也 選手
縁があって2007年の鈴鹿1000kmでNSX-GTデビュー。しかもいきなりゲリラ豪雨のなかでの運転でしたから、本当に大変でした。そのときの走りが評価されて、翌年には当時チャンピオンチームだったARTAのシートを獲得。今思えばとんでもないことですね。NSXって動きがピーキーで、ドライバーを選びます。でもセッティングがハマればめちゃくちゃ速いのは、今も昔も変わりません。先輩たちが作った歴史あるマシンで、レースができたことは誇りです。僕にとってのベストNSXは、2009年規定。3.4L V8エンジンのサウンドはたまりません。ほとんどのドライバーがレブを当ててシフトダウンする走らせ方で、外から聞いているのは至福のひとときでした。
No.17 Astemo NSX-GT/金石勝智 監督
1998年に初めてNSXをドライブしました。最初乗ったときは、フォーミュラーカーのような機敏な動きに驚きを隠せませんでした、本当にツーリングカーなのかってね。そこから進化を重ねた2000年モデルは、本当に痺れました。スイートスポットが狭いんですけど、セッティング決まったときの速さは尋常じゃないんですよ。ただその分マシンは繊細で、ミッショントラブルに泣かされました。世間では「ガラスのミッション」と呼ばれていましたね。そんなマシンでレーシングドライバーを引退させてもらって、今では監督をさせていただいています。ハイブリッドを搭載したり、FRレイアウトになったりと、いろいろチャレンジしたクルマですけど、勇退は感慨深いですね。
No.8 & No.16 ARTA MUGEN NSX-GT/鈴木亜久里 総監督
ARTAとしてはもう20年近くNSXでSUPER GTに参戦している愛着のあるクルマだし、とにかくカッコいいじゃん! だから今年で最後なのは素直に寂しいよね。僕は1年しかNSXで走っていないけど、その前の年に乗っていたGT-Rとはキャラが全然違った。NSXはいいセッティングを見つけると、とてつもなく速い。けれど、見つけるまでの過程が大変。本当に苦労したな。決まらないときはスピンしちゃったしね。でもそれまで1999年モデルで戦って、2000年モデル導入初年度に圭ちゃん(土屋圭市)と優勝できたのは、忘れられない思い出だな。2007年は年間3勝して、最終戦を迎える前にチャンピオンを決めたんだけれど、あれも初快挙だったんだよね。