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海のエヴェレスト! 無寄港・無補給・単独で4.5万キロ航海するヨットレース「ヴァンデ・グローブ」を知ってる? 冒険の魅力を解説します

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TEXT: 南陽一浩(NANYO Kazuhiro)  PHOTO: Vendée Globe/南陽一浩(NANYO Kazuhiro)

技術革新を採り入れつつも美しいモノコック艇の佇まいにこだわる

ところでヴァンデ・グローブに用いられるヨットは、インターナショナル・モノフル・オープン・クラス・アソシエーション(IMOCA)という国際団体の定める型式ホモロゲーションに沿っていて、「IMOCA 60フィート」と呼ばれるモノコックだ。ここにも技術革新の波が押し寄せており、前回大会から「フォイル」と呼ばれる羽根が認められている。

フォイルはここ10数年、カイトボードやサーフボードなどマリンスポーツを席巻してきた一大イノベーションで、まず揚力によってカイトボードや船体が水面と接触する面積を減らす、つまり抵抗を減じる効果がある。それだけでなくヨットの場合、帆が風を受けた際に船体の傾きを制御するため、より効率よく推力に変換できる。かくして速度向上が見込めるのだ。アメリカズ・カップなど「カタマラン」と呼ばれるマルチコック(双胴以上の複数の船体をもつ艇)では、フォイルが船体の左右で回転しながらまるで海面を掻くように走る艇が導入されている。

もちろん艇が速くなればレース自体の期間も短くなり、何十日にも及ぶ主催者側の負担は減る。だが、技術的に優れたヨットが美しいかどうか、観客の人気を得られるかどうかはまた別のところ。フォイルで走るカタマランが少しエイリアンじみてきたように見えるのも、戦前のJクラスのようなクラシック艇で競われるレースが復活しているのも、そういうことだ。

あくまで古典的で美しいモノコック艇の佇まいにこだわりつつ、技術革新も採り入れるヴァンデ・グローブの姿勢は、たとえて言うならル・マン24時間の主催者、ACOが「あくまでGTは2座」としてきたことにも通じる。そういう枠組みごと、注目すべき海の耐久レースなのだ。

ヴァンデ・グローブは今秋2024年11月10日に10回目がスタート

それにしても、フランスには先のパリ-ダカールもあれば、ル・マン24時間にボルドール24時間、自転車のツール・ド・フランスに、カタマラン艇を用いるルート・デュ・ラム、そしてヴァンデ・グローブまで、なぜこんなに耐久レースがいっぱいあるのか? 先のギョーム氏に質問してみた。

「難しい質問ですね(笑)。思うに、試練に立ち向かう冒険心とリスクテイク、同時にリスクマネージメントできる知性やテクニックも評価されますが、最終的にプレーヤー自身が自らを制して克己することができるか? そこを誰もが楽しんでいるんだと思いますよ」

というわけでパリでのオリ・パラから少し後、ヴァンデ・グローブ2024のスタートは11月10日に予定されている。

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