GT3とも異なる加速フィール
一般道で車両を受け取り、ドライブモードをノーマルにして走り出す。分厚い鉄板を転がしているかのような911らしい乗り心地がさらに強調されている。もっともスタンダードなモデルと比べてやや薄着な印象もあって、そのぶん乗り心地に落ち着きがないというか、妙にガサガサとした感じで、なるほど低速域のマナーはさほど気にせずセットされたという印象が先立つ。
むしろ低速域からスポーツモードにして脚を固めた方が乗り心地はかえって良いように思う。鉄板フィールは増すが強い脚が全てを受け止めてくれるので不快なショックはほぼほぼない。もちろん、他のスポーツカーに比べるとかなりの硬骨ぶりだけれど。
とはいえ「下道」が得意なクルマでないことは見た目にも明らか。周りの視線も心なしか冷たい。朝っぱらからこんな大仰なクルマを見せられたら、多少のクルマ好きでも目障りに思うのかもしれない。
高速道路の速度域になってようやく「ひといき」ついた。ここでもスポーツモードがいい。前後スポイラーのデフォルトはダウンフォースが最も強くなるようにセットされており、速度を上げるにつれて車体が沈み込むようにして落ち着くのがわかる。文字通りどんなコーナーでも速度を落とすことなくハンドルさえ切ればそのまま走っていけそうなくらい安定している。ソリッド&フラットな感覚はこれまで純粋なロードカーで感じたなかでも最高の部類。「サーキットへ帰れ!」などと外部から言われる前にサーキットへ行きたくなった。
加速フィールもノーマルはもとよりGT3とも随分違う。何がなんでも素早い操作が必要だ。エンジンはあっという間に9000回転近くまで吹け、パドルでのアップシフトでさえ慌ただしく思う。マニュアルなんてもってのほかだろう。
少し速度の高くなったストレートの領域で試しにDRSをオンにしてみた。車体がスーッと浮つきながら前へ行く感覚がある。見えないスリップストリームについたかのようだ。ねっとりとした路面感覚は消え、少々ざらつく。ダウンフォースが減るぶん、路面の主張が増えていた。
オーナー車両ということもあって、今回のテストではGT3 RSの能力のほんのわずかしか体感できなかった。改めてじっくり京都へ連れて帰る日を心待ちにしたい。