東北660ターボGPの3クラスに参戦するには?
2023年も大いに盛り上がった軽自動車のレース、東北660シリーズ。ドリフトや練習会を含めると合計6つのカテゴリーに分かれていますが、そのなかで一番いい意味で「ユルい」カテゴリーが「東北660ターボGP」です。このカテゴリーに参戦するための車両製作のポイントを解説します。
ブーストアップが基本でマシンも仕立てやすい
「東北660ターボGP」は、過給器が付いた軽自動車なら、新規格・旧規格の区別なく、またNAエンジンに過給器を後付けした車両も参加でき、レギュレーションの自由度もそれなりに広いのが特徴。純粋なレース好きや腕を競い合いたいユーザーはもちろん、自慢の愛車でレースの雰囲気を味わいたい人も大歓迎のレースだ。
そんな東北660ターボGPに多彩なマシンを送り込む、埼玉県のプロショップ「オートクラフト」に、タービン交換が認められず車両製作のコストがもっとも安い3クラス仕様の作り方を聞いてみた。オートクラフト代表の日向さん自身が長きにわたって参戦し、とくにHA36型スズキ「アルトワークス」やホンダ「S660」のノウハウを豊富に持っており、サーキットで開発したオリジナルパーツも数多く発売している。
エンジン系は規則でタービン交換が認めらず、吸排気とECUによるブーストアップが定番。インタークーラーなどの補機類は自由なので、予算が潤沢ならそこまで手を付けてもいいが、もっと注意すべきは冷却系のキャパシティだ。ターボやスーパーチャージャーは当然ながら発熱量が多く、春や秋はまだしも夏は水温や油温がかなり上がってしまう。ぶっつけ本番で東北660ターボGPに挑むのではなく、事前にテストしてどこまで強化が必要か判断しよう。
オートクラフトでは現行型およびそれに近いHA36アルト、S660のほかLA400型ダイハツ「コペン」で入念なデータ取りを行い、チューニングの内容と走るコースに合わせた冷却系のメニューを提案してくれるので、不安な人は相談を。
足まわりとブレーキは基本的に自由で、車高調もアーム類の変更も問題ない。参加している車両を見てみると大半はパッド交換のみ、ただしS660はフロントブレーキの消耗が激しいようで、日向さんは経験を活かしオリジナルのローターを開発している。ブレーキに風を送って冷却するダクトも効果的だ。
エアロは大前提として、軽自動車の車幅を超えないこと。そこさえ守ればバンパーの交換も軽量ボンネットも、ダクトを加工して埋め込むようなワザも認められる。タイヤとホイールはフェンダーからはみ出さなければOKで、サイズは自由だがいわゆるSタイヤは使うことができない。多くのユーザーはブリヂストン・ポテンザRE-71RSやヨコハマ・アドバンネオバ、最近ではシバタイヤもちらほら見かけるようになった。
シートベルトの装着不備などが多いので要注意
そして重要なのは安全面。バケットシートと4点式や6点式のシートベルトは言わずもがな、ロールケージも車両規則書では強く推奨と明記されている。なお2023年から追加されたスポーツランドSUGOでは、6点式を超えるロールケージ(車種によってはフロント4点式が認められるケースも)がないと参加できない。そう遠くないうちにエビスサーキットも必須となる可能性が高く、そもそも自分の大切な身体を守るために欠かせない装備なので、今から車両を作る人は何よりも優先させるくらいの心構えを。
ほかに普通の走行会と異なるのは前後の牽引フック、オイルレベルゲージやフィラーキャップの抜け止めなど。牽引フックはコースアウトしたときスムーズに救出する必須アイテムで、近年は軽く他車に接触しても危険のない布製が主流となっている。
これらの装備は取り付ける場所や方法にもルールがあるので、規則書を熟読してもわからなければオートクラフトをはじめ、東北660に参戦しているプロショップで確認してもらおう。とくにシートベルトは取り付けの方法や場所に不備があり、レース当日の朝に行われる車検で指摘されるケースが多い。自分が楽しいはずのクルマ遊びでケガをしないよう、そしてイベントの円滑な進行を妨げないためにも、プロに頼るべき部分は頼って安全なクルマを製作しよう。
もう少しパワーが欲しくなればタービン交換が認められる、1クラスまたは2クラスにステップアップするのもアリだ。より手軽なのは100ps以下に限定される2クラスで、ハイフローなど小さめのタービンが該当する。
ドライバーの経験や車両の改造レベルに合わせた1~3クラス、さらに2ペダル限定の4クラスも設定されている東北660ターボGP。2024年もエビスサーキット西&東コースと、スポーツランドSUGOで開催する予定だ。例年どおり第1戦は3月下旬なので早めに準備しておこう。
■取材協力
オートクラフト
https://www.auto-craft.jp