レパードを引き立てる脇役が必要だと思った
2023年11月4日に岡山県玉野市にある道の駅、みやま公園で開催された「レパードオープンミーティング2023」の会場で、2台の日産「レパード」に挟まれて並ぶ、日産Y30型「セドリック」の存在が気になりました。『あぶない刑事』ファンにとって、レパードが必要不可欠であることは当たり前。しかし、それだけではないもう1台の黒パトカー。これこそが、歴代の人気刑事ドラマにおいて、必ず主役のそばにいた引き立て役。オーナーである吉井浩一さんに、Y30セドリックを迎えた思いを尋ねました。
18歳でレパードを購入し、王道を突き進んだ青春時代
この1984年式Y30型セドリックのオーナーである吉井さんも、再放送で『あぶない刑事』を楽しんだ世代だった。ドラマに登場していた「レパード」に惹かれ、免許取得後18歳にして念願のレパードオーナーに。そしてそのまま、この主役車を相棒としてカーライフを送るつもりが、気付いたらこのサブキャラ扱いのセドリックのオーナーになっていたのだった。
「最初に購入したのは、1989年式の後期型、排気量2000ccのレパードXSでした。色は黒の2トーンで、アルティマ仕様で楽しんでいたのですが、どうしても本物が欲しくなってしまい。結果的に、1991年式の後期型アルティマ、ノンターボの黒2トーンへと乗り換えたのです」
程度が良い個体だったため、トラブルもなく楽しめたけれども、諸事情により手放すことに。その後、再びレパードに乗りたいという衝動に駆られたそうだが、それと同時に子どもの頃に憧れた「黒いパトカー」への思いが再燃。
「冷静に考えてみたら、Y30型セドリックの方がF31型レパードよりも古いのだから、順番としてはセドリックが先に無くなってしまうよね? レパードのイベントに行くと主役はいっぱいいるけど、それを引き立てる脇役も必要だよね? レパードの隣にセドリックがいたら、一緒にイベントを楽しむ人たちとの世界観が、より面白くなるのでは!?」
吉井さんが通称「黒パト」のベースを探すことになったきっかけは、こんな思いからだったのだ。
ターボブロアムからSGLへと、グレードを落とすカスタマイズへ
この愛車は5年ほど前に入手。グレードはターボブロアムだった。しかし、劇中車では中間グレードであるSGLがベースとなっている。この車両が発売された当時は、バブル直前で日本の景気が上昇気流に乗っていた時代。しかも、日本の市販車として初のV型6気筒エンジン=VG型を搭載という話題もあり、上級グレードのV30ターボブロアムの方が圧倒的に支持された。そのため、SGLグレードの個体を探すのは、さすがに難しかったのだ。
「中古車情報で普通に掲載されている個体でした。長期在庫で売れ残っていたようで、販売価格はとても買いやすい設定だったのです。車体色はシルバーで色褪せていたのですが、黒に全塗装することを考えれば、充分納得できる価格帯。しかも、前オーナーさんは日産で働いている方だったそうで、使用歴も問題無しというのもラッキーでした」
そして、憧れの港署の黒パト仕様へのカスタムに着手。上級グレードから中間グレードへと、ドレス「ダウン」するべく、エンブレムを変更。フロントトップオーナメントも、スタンドタイプではなく目立たないフラットタイプへ。さらにSGL用カセットデッキも入手し、ホイールも変更。これで、吉井さんのイメージに近い「黒パト」が完成したのだ。
「できることならば、内装もSGL用に変更したいのですが、なかなか見つからず。ターボブロアムは高級感がありますが、SGLはシートやトリムなどがもっとフラットなデザインなので。一般的には上のグレードを目指すドレスアップが主流なのでしょうが、ドレスダウンなカスタムは一般的なY30型セドリック好きの方々には、理解されにくいでしょうね(笑)」
そう笑う吉井さんだったが、ご自身が掲げた本来のコンセプト、主役を引き立てる名脇役のポジションを達成していたのは間違いない。たくさん並ぶレパードの中で、唯一存在したY30セドリック。車中からはナカさん(ベンガル)とパパさん(山西道広)の賑やかな会話が聞こえてきそうな雰囲気だった。