ツインテールへと導いたA220のストーリー
そのザガートが今回チョイスしたストーリーは、アルピーヌ「A220」だった。1960年代終盤のル・マン24時間レースに、A210やA110などとともに投入されたA220は、その中の1台こそ総合8位でフィニッシュするものの、ル・マンで優勝するという目標には大きく届かなかった。チームの方針はA220の活躍の場をスプリントレースやラリーとすることに変わり、デザイナーはそれに伴ってル・マン仕様のA220の象徴ともいえたロングテールを300mmもカット。新たなシルエットのA210が誕生したのだった。
今回ザガートが生み出したAGTZツインテールは、そのネーミングが物語るとおり、2タイプのテールを自由に使い分けることができる、すなわちボディのテールセクションを着脱することで、ロングボディにも、そしてショートボディにもシルエットを変化させることができるモデルとして仕上げられている。
ベースのモデルはもちろんアルピーヌA110。エレガントなロングテールは、当然のことながら高速域でのエアロダイナミクスの向上にも貢献し、またショートテールは見た目のたくましさそのままの、ワインディングでの躍動的な走りを演出してくれるだろう。その選択は完全にオーナー自身の手の中にある。
AGTZツインテールの生産は19台の限定で行われ、デリバリーはすべてラ・スクアドラを介して行われる。価格は税抜で65万ユーロ(邦貨換算約1億600万円)からとなっているが、19台のAGTZは、すでにそのすべてにオーナーが決定済み。2024年の5月にイタリアのコモ湖近くのヴィラ・デステで開催される、コンコルソ・デレガンツァ・ヴィラ・デステでは、一般公開も予定されているというから、その姿を見るにはそれらの格式あるイベントへの出品を期待するほかはない。