バブル末期に浸透したクルマ
1990年代は、今ではネオクラシックカーと称され、密かな人気を呼んでいる国産車が続々と登場した時代でした。ここでは、1994年デビューの多人数ファミリーカーの先駆け、ミニバンのホンダ「オデッセイ」、1997年に世界をアッと言わせた量産ハイブリッドカーのパイオニアであるトヨタ「プリウス」といったファミリーカー、老若男女問わない一世風靡カーはあえて除き、当時のトレンドを追いかける若者たちに浸透したクルマを紹介します。
アッパーな女子にウケた日産フィガロ
筆者は当時、講談社『ホットドッグ・プレス』のクルマ部門のライターとしても活動し、1994年からは同誌の推薦で日本カー・オブ・ザ・イヤーの選考委員を務め、ホットドッグ・プレスならではの「モテるためのクルマ選び」や「モテるためのドライブ術」などを執筆していた。1991年9.25号では「絶対欲しくなるクルマ大集合」という第1企画で、巨匠・徳大寺有恒さん、近藤正彦さんとの対談も、90年代ファッション(筆者はG・アルマーニ)に身を固めて行い、掲載されている。
それでは、そうした日本がまだ浮足立っていた時代に浸透したクルマを紹介しよう。1990年代に彗星のごとく登場した、女子ウケ抜群の1台が、1991~1992年限定で発売された日産「フィガロ」だ。当時、TVドラマ『相棒』に登場し、今では『バナナマンのせっかくグルメ!!』でも日村勇紀さんの足として大活躍しているコンバーチブルのパイクカーである。
当時は女子大生を中心とした女性に超人気で、それも東京・港区、杉並区、世田谷区あたりに住む、アッパーな女子にウケていたと記憶する。もちろん、ボディカラーによっては男子が乗ってもおかしくないのだが、似合ったのは女子2人乗車。女子が運転し、隣に彼氏……というパターンも東京・青山通りでよく見かけたものだ。
ボディカラーはペール系を中心に4色が設定されていた。なお『バナナマンのせっかくグルメ!!』で愛用されているクルマのようなイエローは設定がないため、オールペンの特注カラーのようだ。ニッチなキャラクターのクルマながら、当時、一世を風靡し、その余韻が今に続いている希少な1台といえる(バナナマンのおかげ?)。
港区系お嬢様がこよなく愛した初代ルノー トゥインゴ
女子の話題が出てきたところで、筆者の知る当時のいわゆるお嬢様がこよなく愛した輸入車の1台が、初代ルノー「トゥインゴ」。愛らしいスタイル、手頃でどこにでも駐車しやすいサイズは、運転がそれほど得意ではない港区系お嬢様に大ウケ。筆者は当時、三栄書房が出版した「すべてシリーズ」の『ルノー・トゥインゴのすべて』でトゥインゴの記事を担当したのだが、南青山いちょう通りのカフェの前で撮影した際、トゥインゴ女子として登場したのは、トゥインゴに似合うアパレルのプレス、デザイナーさんといったファッション通、カタカナ商売の女子たちだった。
デートカーとしても最高! 初代ユーノス ロードスター
1990年代で世界に誇る大ヒット・ライトウェイトスポーツカーこそ、1989年に登場した初代ユーノス「ロードスター」だったわけで、その系譜は今に続いている。ロードスターは、走り屋はもちろん、デートカーとしても最高の1台で、フルオープンで湘南や伊豆の海辺の道を、筆者もギャルを乗せて疾走したものだ。ただ、六本木といった大人の遊び場にはあまり見られず、全国津々浦々、東京近郊のロードスターを走らせやすい環境に主に生息していたと記憶する。