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イタリア旅行で行ってみたい、クルマ好きなら死ぬ前に1度は訪れたい場所をお教えします! 屋上のテストコースは圧巻です【週刊チンクエチェントVol.31】

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TEXT: 嶋田智之(SHIMADA Tomoyuki)  PHOTO: Stellantis N.V/嶋田智之(SHIMADA Tomoyuki)

博物館は8つのエリアに分けられテーマごとに展示

ところが2023年の春、ひさびさにリンゴットを訪ねてみると、ガラッと様子が変わっていて、なかなかおもしろかった。いや、相変わらず1周すると1kmもあるショッピングフロアも楽しいし、入ったことはないけど映画も楽しめるみたいだし、そういうところは変わってない。というか、むしろさらに充実してるようにすら思えた。

ならばいったいどこがガラッと変わってたのかといえば、主として屋上のあたり。ステランティスはここにフィアット創業家であるアニェッリ家が所有する絵画などを展示する“アニェッリ絵画館”、カフェを併設した“Casa 500(チンクエチェントの家)”という小さな博物館、“La Pista 500(チンクエチェントのサーキット)”という名の屋上庭園を2021年に開設し、今では一般公開しているのだ。情報としては知っていたのだけど、行ってみたら予想を遙かに超えていた。

アニェッリ絵画館は以前からあったように記憶してるのだが、パブロ・ピカソ、エドゥアール・マネ、ピエール=オーギュスト・ルノワール、アメデオ・モディリアーニ、アンリ・マティスといった僕ですら知ってる芸術家たちの名作を間近で見ることができる、アートが好きな人にはたまらない空間。それを見るためだけにリンゴットを訪ねる価値すらあると思う。だが、僕は芸術に関して門外漢もいいところだから、紹介はこんなところにしておこう。

絵画館があるのは大きな玉ねぎ型の会議室とヘリポートの、ちょうど対にある高い屋根の建物なのだが、Casa 500はそのちょうど下側に位置している。アニェッリ絵画館の一部、と考えていいだろう。展示エリアはおよそ700平米というコンパクトといえばコンパクトな博物館で、そこが8つのエリアに分けられテーマごとに展示がなされてる。

見渡してみてひときわ目立つのは、木製のヌォーヴァ500。これはプレス型を製作するときの基にもなった、マホガニー材によるモックアップだ。ショーケースの中には、ダンテ・ジアコーサが描いたドローイングもあるし、実際にクルマに取りつけられたのと同じパーツも並ぶ。別のコーナーではチンクエチェント同様イタリアン・デザインによってたしかな地位を築いた工業製品が並んで展示されていたり、3世代にわたるチンクエチェントが社会に与えた影響が紹介されていたりもする。ヌォーヴァ500が描かれたポスターのコレクションも見られるし、映像でフィアットにとっての重要な人物や場所などが確認できるコーナーがあったりもする。広さのわりに興味深い構成ができあがってるのはさすが。

ここには“FIAT CAFE 500”が隣接されているし、また“Ristorante La Pista(サーキット・レストラン)”も同じ敷地内にあるから、のどを潤したりオナカを満たしたりできるのも嬉しいところ。リストランテはイタリアンをベースにしたちょっと独創的なフュージョン風で、かなり美味しかった。安いとはいえないけど、満足度は高いと思う。

昔の屋上テストコースは4万本の植物が連なる空中庭園に

そして、La Pista 500だ。ここは最高に素晴らしい。もともとトリノの街やピエモンテの山々を遮るものなしに眺望できて、とても気持ちのいい場所だったのだが、昔の屋上テストコースは今、2万7000平米の面積におよそ300種類、4万本の植物が連なる空中庭園となっているのだ。

昔とはちょっとばかりレイアウトが変わっているけれど、もちろん両側のバンクは残されていて、オーヴァルのコースの内側に沿うようにして遊歩道も整備されている。1周が1.1kmあるしとにかく眺めが素晴らしい上に多種多様な植物が目を楽しませてくれるから、散歩コースとしては抜群。螺旋状のスロープも、もちろん見ることができる。今回はさすがにグルリ1周お散歩というわけにはいかなかったが、おそらく再訪することにはなるだろうし再訪したいのだけど、そのときにはトリノという街の、そしてフィアットという自動車メーカーの今昔に想いを馳せながら、ゆっくり歩きたいと思ってる。

日本でも歴史的な建造物をリノヴェーションして新しい価値を生み出す動きが進んでいるが、昔から旧き佳きモノを大切にするのが当たり前だったイタリアのそれは、さすがに進んでいてひと味違ってる。この旧リンゴット工場跡に行けば、1日をたっぷりいい気分で楽しみながら過ごせてしまう。

しかもフィアットの工場からほとんど道を隔てた向かいのようなところには、日本ではイタリア食材の宝庫としての貌がよく知られてる“EATALY(イータリー)”の第1号店がある。実はこちらも1900年代の初頭にベルモットの酒造メーカーが建てた工場をリノヴェーションして再利用してたりするのだけど、まぁそれはそれ。ここでも、食材探しや施設内での食事でやっぱり1日近くを楽しめてしまう。僕なんて毎回、決まってパスタとパスタソース&ペーストのところで時間が止まっちゃうくらい。こちらも規模が巨大だから、本当に困る。嬉しくなっちゃうくらいに困る。

ちなみにこのフィアットの旧リンゴット工場の建物の一部を再利用したホテルはNHトリノ・リンゴット・コングレスとダブルツリー・バイ・ヒルトン・トリノ・リンゴットとふたつあって、どちらも雰囲気がよく居心地もいい。どちらも決して安くはないけれど、めちゃめちゃ満足感が高い。フィアット好きならなおのこと、だ。

僕のオススメとしては、イタリア旅行に行ったらトリノで1〜2泊。前回のヘリテイジハブと旧リンゴット工場、そしてEATALY、さらにはトリノ自動車博物館、旧市街……とゆったり楽しんで来るのがいいと思う。僕自身はこれまで駆け足のような滞在ばかりだから偉そうに言えたもんでもないのだけど。

Casa 500とLa Pista 500は、残念ながら無料の施設ではない。だが、アニェッリ絵画館の入場料に2ユーロを加えた、わずか12ユーロですべての施設に足を踏み入れることができるのはリーズナブルだと思う。

今回文中で触れているところのウェブサイトを貼っておくので、ぜひともイタリア旅行の計画を立てるときに参考にしていただきたい。

◎Pinacoteca Agnelli (アニェッリ絵画館)/ Casa 500 / La Pista 500
https://www.pinacoteca-agnelli.it

◎Ristorante La Pista
https://ristorantelapista.com

◎Centro Commerciale Lingotto(ショッピングコンプレックス)
https://www.centrocommercialelingotto.it/

◎Eataly Torino Lingotto
https://www.eataly.net/it_it/negozi/torino-lingotto

◎NH Torino Lingotto Congress
https://www.nh-hotels.com/en/hotel/nh-torino-lingotto-congress

◎DoubleTree by Hilton Turin Lingotto 
https://www.hilton.com/en/hotels/trntldi-doubletree-turin-lingotto/

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  • 嶋田智之(SHIMADA Tomoyuki)
  • 嶋田智之(SHIMADA Tomoyuki)
  • 『Tipo』の編集長を長く務め、スーパーカー雑誌の『ROSSO』やフェラーリ専門誌『Scuderia』の総編集長を歴任した後に独立。クルマとヒトを柱に据え、2011年からフリーランスのライター、エディターとして活動を開始。自動車専門誌、一般誌、Webなどに寄稿するとともに、イベントやラジオ番組などではトークのゲストとして、クルマの楽しさを、ときにマニアックに、ときに解りやすく語る。走らせたことのある車種の多さでは自動車メディア業界でも屈指の存在であり、また欧州を中心とした海外取材の経験も豊富。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員
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