スペチアーレモデルは今でも人気!
フェラーリ初の市販ハイブリッドカー「ラ フェラーリ」が2024年1月31日、RMサザビーズがフランス・パリで開催したオークションに出品されました。出品車両はビアンコ・アヴスという珍しいボディカラーをまとい、走行距離はわずかに9kmと驚くほどに少ない1台でした。
F1マシン直系のアクティブ・エアロ・ダイナミクスを採用
2002年に「エンツォ フェラーリ」がデビューした時から、どうしても心の中で消すことのできない疑問が残った。エンツォ フェラーリとは、フェラーリの創業者であり同社の歴史を語るには最も重要な役割を果たす人物。このエンツォの名を使ってしまったら、はたしてそれ以上に進化しなければならないフェラーリの次世代スペチアーレには、どのようなネーミングを与えるというのか。どれだけ考えても自分にはその疑問を解くことはできなかった。
フェラーリの社内では、どうやらそのニューモデルは「ニュー・エンツォ」と呼ばれていたらしい。正式なプロジェクト・コードは「F150」。それにはフェラーリの市販車としては初のハイブリッド・システムが搭載されることが明らかにされる。そして2012年のパリ・サロンでカーボンモノコックが披露された。
そして2013年のジュネーブ・ショーでその瞬間が訪れた。F150プロジェクトが長年の疑問であったエンツォを超えるネーミングとともに華々しくデビューを飾ったのだ。注目の車名は「ラ フェラーリ」。英語に訳せば「ザ フェラーリ」の意である、それがまさに誰をも納得させるネーミングであることに異論はないだろう。
ダラーラから供給を受けるカーボンモノコックは、エンツォと比較して曲げ剛性で22%、捻じり剛性では27%も向上したというラ フェラーリ。ボディデザインはフラビオ・マンツォーニ率いるフェラーリの社内デザイン・チームによって仕上げられたもので、もちろんエアロダイナミクスは前作エンツォからさらにアップデートされている。1960年代のスポーツプロトタイプへのオマージュを込めたとともに、F1マシン直系のアクティブ・エアロ・ダイナミクスを採用し、常時最適な空力特性を実現している。
システム総計で963psを実現
パワーユニットは、ラ フェラーリにとっての最大の見どころ。ミッドにはまず6262ccのV型12気筒自然吸気エンジンが搭載され、7速デュアルクラッチ・トランスミッションと第1のエレクトリック・モーターを一体成型。さらに第2のエレクトリック・モーターをエンジン前方に配置し、こちらはリチウムイオン方式の二次電池に接続され、減速時にはジェネレーターとして機能する。
ちなみに「HY-KERS(運動エネルギー回生システム)」と呼ばれるハイブリッド・システムは、エレクトリック・モーターのみでの走行はできない。また最高出力はV型12気筒エンジンが800ps、これにエレクトリック・モーターの163psが加わり、システム総計で963psが得られる計算だ。
もちろんパフォーマンスも驚異的なものだ。車重はわずか1255kgに抑えられていることもあり、0-100km/h加速は3秒以下(フェラーリによる公称値、実際には2.6秒が記録されている)、最高速は350km/h以上に達する。フィオラノ・サーキットでのラップタイムは、エンツォからさらに5秒を短縮したという。
その一方でCO2排出量では333g/kmと、ほぼ「458」シリーズに相当する数字を実現しているのだから、10年以上も前に誕生したハイパーカーであるとは信じがたい。
今回RMサザビーズのパリ・オークションに出品されたラ フェラーリは2016年に製作されたモデルで、ビアンコ・アヴスという珍しいボディカラーと、ネロ・アルカンターラのインテリアを持つ仕様。
スポーツエキゾーストやフロントサスペンションのリフトアップ機構、テレメトリー&トラックカメラパッケージ、統合オーディオシステムが装備され、さらにレッドのブレーキキャリパーや、ブラックペイントの20インチ径ホイールなどが追加されている。
現在までの走行距離はわずかに9km。2020年と2022年にはフェラーリ・ディーラーによるメンテナンスが実施されており、2021年には新しいハイブリッド・バッテリーを、2022年にはフェラーリが推奨するリチウムタイプの補助バッテリーを装着するなど、コンディションは最新スペックだ。
RMサザビーズが設定した予想落札価格は370万~480万ユーロ(邦貨換算約5億4020万円~7億80万円)。その落札価格には大きな注目が集まったが、最終的にプライスボードに表示された数字は395万ユーロ(同5億7670万円)というものだった。フェラーリのスペチアーレ、その人気の高さは変わらないようだ。