HKSが提案する新しいカスタマイズの形
NAPAC(日本自動車用品・アフターマーケット振興会)が大阪オートメッセ(OAM)2024で合同ブースに並べたのは、3台のレクサスLMでした。その注目度はとても高かったと言えるでしょう。これまでに紹介したトムス、ブリッツに続き、HKSが手掛けた「レクサスLM eドライブコンセプト」を紹介します。
後席に搭載するシミュレーターに合わせたセッティングに
2023年、創業50周年を迎えた「HKS」が掲げたコンセプトが「Tune THE Next」。これは同社がチューニングの未来を見越して何ができるか、提案していこうというもの。現社長である水口大輔社長の肝いりのプロジェクトでもある。東京オートサロン2024では具体的な内容が盛り込まれた車両が複数台展示されていたが、大阪オートメッセに持ち込まれた漆黒の「レクサスLM」もそのうちの1台だ。
後席を取り外し、プロ仕様のレーシングシミュレーター「DRiVe-X」を取り付けたことに誰もが目を奪われる。車両のカスタマイズとしては純正の電子制御ダンパーを活かしつつ、スポーティなルックスとショーファーカーに相応しい質の高い走りを実現するためにハイトダウンスプリングに加えて、ヤマハ製パフォーマンスダンパーを追加した。そしてホイールをヨコハマの20インチ・鍛造1ピース「RZ-DF2」に交換した程度となる。隣に並ぶトムスやブリッツと比べて手数は少ない。
一体なぜなのか? その理由は車高を落としてエンジンに手を加えて、というこれまでの王道の手法だけではなく、クルマの購入層に対し、HKSとしてどのような提案ができるか? という考えで誕生したからである。簡単にいえば馬力を上げたり、車高を下げたりといったことはいつでもできる。そうではない視点でいかにユーザーニーズを満たすかに主眼を置いたのだ。
今回は運転手も抱えている超富裕層のクルマ好きがターゲットで、週末はサーキットのガレージに保管しているクルマでコースを走るが、日々練習する時間はない。では、どうやってスキルアップするかを考えたときに、ドライビングシミュレーターをクルマに搭載すれば、いつどこでも練習ができるのではないか、という考えから開発がスタートした。
後席内装は黒基調とし、調光機能付きダウンライトを変更することで、シミュレーターに集中できる環境に仕立てている。「車高は落としても乗り心地は損ないたくない」「スポーティさは追求しよう」と考え、足まわりの開発やタイヤ&ホイールのチョイスなどが煮詰められたという印象だ。
また、今回の「レクサスLM eドライブコンセプト」は富裕層だけでなく、移動式ドライビングシミュレーターとしての活用も想定。イベントのみならず、学校や施設などで体験してもらうことで、クルマ好きを増やすことに繋がるのではないか、とも考えている。
これまでのチューニングパーツの開発・販売に加えて、サスティナブルやカーボンニュートラルなどの環境問題に対応しながら、ユーザーのライフスタイルに合わせたさまざまな形も提案していくなど、これまでより幅の広いビジネスをHKSは構築しようとしているのだろう。トヨタ「ハイエース」のPHEVを独自で作り上げるなど、HKSの活動は、もはや単なるアフターパーツメーカーの枠ににとどまらない。業界のリーダーとしてチューニング業界の未来を見つめているのだ。