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幻のマツダ「RX500」の持ち主はだれ? 行方不明だったプロトタイプが発見されて復活した陰に、広島工業界の意地がありました

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TEXT: 西川昇吾(NISHIKAWA Shogo)  PHOTO: 西川昇吾(NISHIKAWA Shogo)

  • 2024年2月のノスタルジック2デイズにマツダが出展した1970年の実験車両「RX500」
  • ロータリーエンジンとミッドシップの可能性を模索して生まれた実験車両
  • デザインは、後にマツダの初代デザイン本部長となる福田成徳氏による
  • シューティングブレークを思わせるような特徴的なシルエット
  • 空気抵抗の低減を狙ってこのシルエットになった
  • パワートレインは基本的に、FFであったルーチェロータリークーペのものを流用
  • エンジンはレース用の10A型ペリフェラルポートとなっている
  • 実験車両RX500のコクピット
  • 現在は広島市が運営しているヌマジ交通ミュージアムに展示されている
  • 2024年2月のノスタルジック2デイズにマツダが出展した1970年の実験車両「RX500」

ノスタルジック2デイズでマツダブースが注目の的に

マツダといえばロータリーエンジンを思い浮かべる人が多いでしょう。2024年2月に横浜で開催された「ノスタルジック2デイズ」でも数々のロータリーエンジン搭載車を見ることができましたが、その中でも多くの来場者から注目を集めていたのが、マツダブースに展示されていた1970年の実験車両「RX500」です。

ロータリーエンジンとミッドシップの可能性を模索した実験車

RX500は1970年の東京モーターショーで公開された。1967年に「コスモスポーツ」でロータリーエンジン搭載のスポーツカーを世に送り出したマツダは、「次はヨーロッパのスポーツカーと同じミッドシップだ!」と考え、ロータリーエンジンとミッドシップの可能性を模索。こうして生まれた実験車両がRX500だ。

RX500のパワートレインは基本的に、FFであった「ルーチェロータリークーペ」(1969年)のものを流用し、エンジンはレース用の10A型ペリフェラルポートとなっている。シューティングブレークを思わせるような特徴的なシルエットは、後にマツダの初代デザイン本部長となる福田成徳氏によるもので、空気抵抗の低減を狙ってこのシルエットになった。

しかし結果としては、ミッドシップレイアウトではパワートレインが大きく、重量バランスが取れないということが判明。それが分かっただけでもこのRX500が存在した意義はあった。こうしてマツダの歴代ロータリースポーツはFRとなったわけだ。

いっぽう役目を終えたRX500は長らく行方不明となっていたが、2008年に倉庫から発掘されレストアを開始し、レストア後は広島市のヌマジ交通ミュージアムに展示されていた。走行可能な状態までレストアされていたものの、2021年に再び走行不可能な状態になり、そしてこの度、2度目のレストアが完了したというわけだ。

若手メカニックたちを中心にレストア

現在は広島市が運営しているヌマジ交通ミュージアムに展示されているため、このRX500は広島市の持ち物となっている。レストアにあたっては広島市の予算承認が必要となるわけだが、歴史的な工業文化財を後世に伝えたいという想いに対して理解が得られたようでレストアへの許可が下りた。

レストア作業に際しては、「ロータリーの技術を次世代に伝えたい」「ロータリーエンジンユーザーをサポートできる体制を継続したい」とのことから、広島マツダの若いメカニックを中心に敢行。広島のショップであるクロマノアトリエ(Atelier Chroma)の協力を得ながらレストアを行った。若手メカニックたちはロータリーエンジンに新鮮な反応を示していたそうだ。

マツダと広島の工業界の誇りが詰まった1台

レストアで苦労したポイントを聞くと、何といっても部品がないことであったそうだ。レース用の10Aエンジンはアルミを主体に作られていてスペシャルパーツが多い。量産のパーツを集めて加工したり、ときにはワンオフで製作したりする必要があったとのことだ。

なお、クラッチも交換が必要であったが、こちらは当時製造していた会社に掛け合ったところ新たにワンオフで新造してもらったそうだ。他にもこのようなエピソードが多いらしいのだが、これも地元のパーツサプライヤーと協力しているマツダだからこそといえる。ロータリーエンジンとマツダは、広島の工業に携わる人たちの誇りなのだろう。

こうしてRX500は復活を果たした。現在は特別なイベント時以外はヌマジ交通ミュージアムに展示されているとのことなので、気になる人は広島へ見に行ってみるのをオススメする。また、可能な限りイベントでの展示や走行もしていきたいとのこと。今回のノスタルジック2デイズでも低速ながら走行をし、そのエンジンサウンドを会場に響かせていた。

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