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中国でカスタムカーを見かけない理由とは? 厳しい車検制度のせいで自由に改造を楽しめません【Key’s note】

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TEXT: 木下隆之(KINOSHITA Takayuki)  PHOTO: photo AC/AMW

  • 中国の町並み
  • 中国・上海の街並み
  • 上海では日本車も多く走っている
  • 中国といえば大量のバイク
  • 街なかを見ても手を加えているクルマは見かけない
  • 車両の多い都市部でも見かけない
  • 北京西駅の周辺もノーマル車ばかり

スポーツカーは多いのに改造車がいない!?

レーシングドライバーであり自動車評論家でもある木下隆之が、いま気になる「key word」から徒然なるままに語る「Key’s note」。今回のキーワードは「中国に改造車がいない理由とは」です。いまや世界一の自動車販売台数を誇る中国市場。輸入スーパースポーツモデルなども多く走っており、多くのクルマ好きがいると推測されます。しかし、ホイール交換など手を加えているユーザーがいないのです。その理由は、中国の厳しい車検制度にあるようです。

車検制度が厳しくホイールすら変更できない

中国でのクルマの販売攻勢は止まることを知らないかのようですね。2024年の自動車販売台数は3000万台を超えると予想されています。15年連続で世界一になることは確実です。

そんな爆上がりの中国自動車市場ですが、カスタム文化の話題を見聞きすることはありません。雨後の筍のようにあれほど多くの自動車メーカーが誕生し、さまざまなニューモデルがデビューしています。となれば、カスタムすることで個性を主張したくなるのがクルマ好きの道理なのですが、カスタムブランドを耳にすることはありません。

「中国人は、改造が嫌いなのかぁ」

僕の友人が、訝しそうに指摘しました。実際に中国を走っていても、改造車を目にすることはありません。僕が訪れたのは北京や上海、あるいは香港に近い珠海です。経済的に発達しており、世界の高級車にあふれています。フェラーリやアストンマーティンなどが、富裕層の下駄がわりに走っています。そうした人々は世界にアンテナを張っていますし、多くの先進国がそうであるように、マイカーの改造願望が芽生えてもいいはずです。だというのに、カスタムカーを1台も見ることがないのです。

中国にカスタムブランドがない理由は明確です。中国の車検制度は驚くほど厳しいからです。一切の改造が許されず、新車販売の状態を完璧に保っていなければ、車検を合格させることはできません。クルマの外観を大きく変えるようなエアロカスタムは当然のこと、ホイールの変更も許されないというのですから、可哀想に感じますよね。

車高の変更も認められません。ほとんど走行性能に影響することのないカラーリングの変更すら許されないというのです。外観を著しく変更させないブレーキパッド等のブランド変更は許されているそうですが、大胆なチューニングはご法度というのは、いかにも社会主義国家らしいですね。

マイカーを改造しつつ、車検の際にノーマルに戻す方法も考えられますが、中国では道という道には公安に直結したカメラが設置されており、日々監視されています。改造が見破られればすぐに警察官がやってくるといわれています。逮捕される危険を犯してまで改造するユーザーがいないのも道理ですね。

見た目ではすぐわからないブレーキパッド交換などは人気

挑むとしたら、外観から悟られないパワーユニットの改造や、サスペンションの変更などでしょうか(車高が変わるとアウトですが……)。ブレーキパッドは安全性を高めるものですし、外観を著しく変化させないものとして人気のようです。

ただし、多少は規制緩和の傾向にあるようですね。新車購入後の車検が2年から6年まで延長されました。日本よりも緩いのです。新車購入6年目から10年目までの車検サイクルも、1年から2年に緩和されています。

監視カメラから逃れなければならない点は変わりはありませんが、次回の車検までの猶予が延ばされたことで、密かに改造を楽しむことができるようにはなったようです。

それを象徴するように、改造車を集めたイベントは盛況のようです。日本のカスタムブランドも人気だといいます。中国の改造規制が緩和されれば、一気に経済が動く可能性もあります。世界一の自動車大国ですから、そうなればとてつもなく巨大なカスタムワールドが開けることになります。世界中のサードパーティーのメーカーは、虎視眈々とその時を待っているのかもしれませんね。

中国の町並み

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  • 木下隆之(KINOSHITA Takayuki)
  • 木下隆之(KINOSHITA Takayuki)
  • 1960年5月5日生まれ。明治学院大学経済学部卒業。体育会自動車部主将。日本学生チャンピオン。出版社編集部勤務後にレーシングドライバー、シャーナリストに転身。日産、トヨタ、三菱のメーカー契約。全日本、欧州のレースでシリーズチャンピオンを獲得。スーパー耐久史上最多勝利数記録を更新中。伝統的なニュルブルクリンク24時間レースには日本人最多出場、最速タイム、最高位を保持。2018年はブランパンGTアジアシリーズに参戦。シリーズチャンピオン獲得。レクサスブランドアドバイザー。現在はトーヨータイヤのアンバサダーに就任。レース活動と並行して、積極的にマスコミへの出演、執筆活動をこなす。テレビ出演の他、自動車雑誌および一般男性誌に多数執筆。数誌に連載レギュラーページを持つ。日本カーオブザイヤー選考委員。日本モータージャーナリスト協会所属。日本ボートオブザイヤー選考委員。
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