大好きなF30型レパードでグループ5マシンを再現
日本のモータースポーツが盛んになった頃、「グラチャン族」という言葉が生まれました。これは1970年代から1980年代にかけて、富士グランチャンピオンレース(グラチャン)に影響を受けた若者たちの改造車文化を象徴するスタイルでした。ここで紹介する日産初代F30型「レパード」は、そうした改造文化が過激化していった中で生まれたテイストを取り入れつつ、現代風のアレンジを加えた1台です。
全体のフォルムを追求して「デッパ」は65センチに設定
1970年代後半から富士グランチャンピオンレースのサポートレースとして開催され話題になった「スーパーシルエット」(グループ5)。ここで走ったマシンは、市販車の面影を残していながら、迫力とカッコ良さが段違いのレースマシンで「シルエットフォーミュラ」と呼ばれた。その衝撃的なフォルムは当時の若者たちの心を掴み、それを模したさまざまなマシンが誕生した。
ここで紹介するF30型レパードはそんな時代に流行った改造を再現しながら、さらに現代流のアレンジを加えたカスタムカーだ。
徹底的に作り込んでいることは一目瞭然。古くから伝わる伝統の街道レーサーのスタイルとは違い、このレパードはかなり現代流のアレンジ要素を加えて、カスタムカーとして美しく仕上げてある。
ボディカラーは、オーナーのトレードカラーであるオレンジとゴールドの2トーンカラーでリメイクし、外装はこのクルマのためにワンオフ製作した型抜きのシルエットフォーミュラ風パーツをセット。フロントスポイラーに装着させる「デッパ」の延長幅は65cmに設定したが、これは全体のバランスを考えて設計したという。
「どこかひとつが目立つのではなく、全体を通して見たときにすべてが整い、バランスをキープできているフォルムを重視した」とオーナーのSOUKIさんは話してくれた。
エンジンはRB25DEに換装してマフラーには可変バルブ
車高に関しては、現代の便利なパーツを積極的に使う方向で改造している。したがってサスペンションは、昔ながらの車高調キットではなく、上げ下げワンタッチのエアサスに交換。自在に素早く調整できるようにしている点も特徴だ。
また、マフラーに関しても120cmの「竹ヤリ」を装着しているが、排気管内にバルブをセットし、排気音量を調整できるように可変機構を仕込むアレンジも現代風の細工といえる。つまり場面に応じて、吐き出す爆音の音量調節が可能というわけだ。
エンジンはRB25DEを搭載。快適に走りを楽しむためにオリジナルエンジンを捨てて、パワーもトルクもあるRB25エンジンに換装しているのだ。
エンジン本体のチューニングは施していないが、「タコ足」のエキマニを装着し、サクションパイプを交換、むき出しエアクリーナーを装着するなど、補器類のグレードアップが図られていた。
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このクルマはSOUKIさんの趣味で作った1台であり、その目的はイベントに出すためのショーカーである。したがって、「派手で良い」と割り切って作り込まれており、また、そうでなければ面白くない。
昔ながらの改造スタイル、俗にいう街道レーサーテイストの中に、アメリカ発祥のカスタムの要素もプラス。そこがSOUKIさんの狙いでもある。最近、こうしたインパクトのあるカスタムカーがよく有名アーティストのMVに登場するのを見かけるようになった。SOUKIさんのF30レパードも、この異色のルックスならば、そうしたMVに使われる日もそう遠くないかもしれない。