ワンオーナーで30年以上、空調管理された場所で保管された
2024年3月1日〜2日、RMサザビーズがアメリカ・マイアミで開催したオークションにおいてランボルギーニ「カウンタックLP5000QV」が出品されました。ランボルギーニの記録によれば北米仕様として正式に大西洋を渡ったLP5000QVはわずか66台で、出品車両はそのうちの1台となります。
生産型が誕生するまでの道のりが長かったカウンタック
ランボルギーニがこれまで生産したモデルの中でも、とりわけその存在感が強いのは、やはり最初の縦置きV型12気筒ミッドシップ車となった、カウンタックだろう。カウンタックの前身であるミウラは、V型12気筒エンジンを横置きミッドシップし、先日他界したマルチェロ・ガンディーニの手による流麗なボディを組み合わせた、いわばスーパーカーの始祖としても語られ得ることが多いモデルだった。
しかし、その重心高の高さを問題としたコーナリングでの挙動や、キャビンへダイレクトに伝わる騒音や振動など、さまざまな欠点を持っていた。したがってその後継車であるカウンタックの設計にあたり、こちらもすでにこの世を去ったチーフ・エンジニアのパオロ・スタンツァーニは、最初からV型12気筒エンジンを縦置きミッドシップすることを考えたのだ。
結果エンジンとトランスミッションを直列に接続し、そのユニットを車体後方からキャビンに向けて、つまりシフトレバーをキャビンの最先端に位置させ、ここから再びトルクの進行方向を180度転換し、リアのデファレンシャルに向けて送るという独特の手法を得たカウンタックのファーストモデル、すなわちプロトタイプのLP500は1971年のジュネーブ・ショーで発表された。だが、そこから最初の生産型であるLP400が誕生するまでの道のりは長かった。
当初計画した5Lエンジンとスムーズなガンディーニによるボディの組み合わせは、おもに熱対策の面で諦めざるを得ず、ランボルギーニからは1974年になってカウンタックLP400、つまり4LのV型12気筒エンジンを縦置きミッドシップするファーストモデルが誕生した。
LP5000QVから北米仕様が追加された
カウンタックはそれからLP400S、LP500Sと進化を遂げ、さらにライバルのフェラーリがテスタロッサを1984年に発表するに至り、LP5000QV(5000QVとシンプルに呼ばれることも多い)へと改良された。チーフ・エンジニアはジュリオ・アルフィエーリである。
アルフィエーリは、やはりさらなるパワーを得るために、V型12気筒エンジンの排気量拡大から、そのチューニングをスタートさせる。ボアの85.5mmはLP500Sと共通だが、ストロークのみを75mmに延長し、正確にはLP500S比でプラス413ccの5167ccを設定。さらにこれまでのサイドドラフト式に代わり、ダウンドラフト式の44DCNF型キャブレターを装備している。そして最大のトピックスともいえるDOHC4バルブヘッドの採用を実現したのだ。最高出力は455ps、最大トルクは500Nmに向上したが、これはLP500S比で最高出力は80psもの強化。テスタロッサ比では75psのアドバンテージとなる。
1985年にデビューを飾ったLP5000QVには、これまで存在しなかった北米仕様も正式にラインアップされている。今回RMサザビーズのマイアミ・オークションに出品されたLP5000QVもその1台で、フロントバンパーはユーロ仕様に。またダウンドラフト方式のキャブレターを持つものの(北米仕様はインジェクションを備えていた)、そのほかのパートはオリジナルのコンディションが保たれたモデルだ。
ランボルギーニの記録によれば北米仕様として正式に大西洋を渡ったLP5000QVは、わずか66台。このモデルはもちろんその中の1台で、メリーランド州のディーラーから現在のオーナーにデリバリーされた後、ワンオーナーで30年以上、空調管理された場所で保管されていたという。現在までの走行距離はわずか1273km。ホイールはもともとゴールドだったが、オーナーの好みでほかのモデルに装着されていたシルバーに交換されたということだ。
残念ながら今回は落札には至らなかった、カウンタックLP5000QV。予想落札価格は85万〜95万ドル(約1億2665万円〜1億4155万円)とされていたが、このモデルはオークション後に売買が成立したという。そのプライスは発表されていない。