パーツはたくさんあれど精度が曖昧!?
名古屋の「チンクエチェント博物館」が所有するターコイズブルーのフィアット「500L」(1970年式)を、自動車ライターの嶋田智之氏が日々のアシとして長期レポートする「週刊チンクエチェント」。第32回は「ゴブジ号、振動の原因は……?」をお届けします。
今後のトラブルの芽になりそうなところを潰してもらう
チンクエチェント博物館主催の欧州車の祭典『ミラフィオーリ』の現場に何とか辿り着き、イベント参加者の皆さんの記念写真のモデルになったり室内に乗り込んでもらってプチ体験をしてもらったまではよかったのだが、結局のところは大事を見て博物館に置いてくることになったゴブジ号。
2021年5月25日の夜に新東名・新清水インターでいきなり事切れるようにして動きを停めたその直接的な原因は、チンクエチェント博物館のクラシケ・サービスの拠点のひとつでもあるスペシャリスト、スティルベーシックが「あくまでも応急処置」という前提ながら手を入れてくれた。ゴブジ号は、調子よく走ってくれたのは確かだった。けれど、やっぱり原因の特定できない振動は大敵。おかげで高速道路走行中にエアクリーナーの上側の蓋が外れて、どこかに落ちていったりした。それに機密性の高い特注オイルに交換してもらったのが効いて噴出量が減ったのはたしかだけど、それでもやっぱり約180km走った後には、エンジンフードの裏側に、それなりのオイルの膜ができあがった。
あらかじめスティルベーシックの平井社長が進言してくださってたとおり、大事をとって1度しっかり細かくチェックしよう、という結論に達したわけだ。
で、チンクエチェント博物館の深津館長が「平井さんのところにクルマを入れましたよ」という連絡をくれたのは、およそ3週間後の2021年6月23日のことだった。その腕前を頼って全国からチンクエチェント(とほかのクセ強なフィアット系)が入庫してくる老舗でありながら、平井秀一社長、そして平井社長が絶大な信頼を置いてるもうひとりの平井さん──同じ名字でありながら親戚でも何でもないという平井大介さんのふたりですべてを回してることもあって、工場は常にパンパン。なかなかゴブジ号を診てもらえるタイミングがやってこなかったのだ。
何せ今回はクルマの各部に悪影響を及ぼす振動の原因を探り、直してもらうこと。それにいったいどこから微量のオイルが噴き出してるのか、そちらも発見して対処してもらうこと。ふたつの大きな課題があった。各部のチェックにはもちろん時間を要するし、場合によっては重整備になる。つまり工場に入っている期間が長くなる可能性が、実はものすごく大きかった。それは平井社長と深津さん、そして僕の共通見解。機会を待って確実に今後のトラブルの芽になりそうなところを潰していこう、というわけだ。