ドライブシャフトが片側だけ長い!?
「振動の原因、わかりましたよ。まず間違いないと思います」
という社長の方の平井さんからの連絡を受けて僕がスティルベーシックを訪ねたのは、その電話から数日後、7月29日のことだった。モノ書きなんてものは暇なときにはゲロゲロに暇なくせして、詰まってるときだけ妙に詰まってる。静岡まで行って帰ってくる日程の調整が、すぐにはできなかったのだ。
目黒の端っこにある自宅から東急東横線→JR横浜線→東海道新幹線→JR東海道本線……と乗り継いで、午後イチに到着。ひさしぶりに対面するゴブジ号はきっといつもの人懐っこい表情で迎えてくれるに違いない……と思ってたのが違ってた。こちらに尻を向け、エンジンフードが取り外され、エンジンルームはギャランドゥ……じゃなくてがらんどう。……すべったな。まぁともかく、エンジンとトランスミッションはすっかり車体から降ろされ、しっかり分離され、振動の原因と思われる当該部分が分解されるのを待つばかり、だったのだ。
社長じゃない方の平井さんがパーツを外して社長の方の平井さんに手渡し……っていうのはとてもややこしいので、大介さんと平井さんという呼び方に切り換えると、大介さんがパーツを外して平井さんに手渡し計測してみると……なるほど、と溜息が漏れる。平井さんの推測は正しかった。
「右側のドライブシャフトが左側よりコンマ何ミリか長くて、まっすぐ回転しないで歪んだ回転運動をしちゃってるんですよ。スピードが上がってその回転がある領域に入ると、振動を生み出しちゃう。はげしくミッション本体を動かして車体全体に伝わるぐらいの振動になっちゃうんですね。50年も昔に作られてずっと走ってきたクルマだから、ぶつけたりぶつけられたりして車体側が微妙に歪んでるケースもあるし、エンジンやミッションの位置がズレちゃってるケースもあるし。
フィアット500は今もパーツは比較的揃いやすいクルマなんですけど、パーツの精度の問題もある。リプロダクションのパーツには、モノによっては新品をちゃんとオーバーホールしてからじゃないと使えなかったりすることだってあるくらいなんですよ。ドライブシャフトも、長さがほんの微妙に違ってるものがある。ほかにも原因はいろいろ考えられたんですけどね。こればかりはバラして計ってみないと特定できないですよね」
というわけで、ここから先の作業では、右側のドライブシャフトを交換、無理な回転運動で傷んだジョイント部分とワッシャー、スプリングを交換、さらにはトランスミッションとエンジンの位置調整、という作業が必要になりそうな感じだった。
そしてここでもうひとつ、ちょっとビックリする発見があった。いや、平井さんと大介さんはいろいろなケースに接してきてるから驚いたりはしなかっただろうけど、僕は「……マジすか?」な感じだったのだ。
と、ここまで話が到達したところで、もったいぶって次回へ続く、だ。われながらなかなか嫌な男である。
■協力:チンクエチェント博物館
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■協力:スティルベーシック
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