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バブル前夜、約100台が市販された原付カー「CV1」を知ってる? スズキが本気で作ったシティコミューターとは【マイクロカー図鑑】

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TEXT: 長尾 循(NAGAO Jun)  PHOTO: 近藤浩之(KONDO Hiroyuki)

二輪/四輪メーカーのスズキが本気で手がけたモデルだった

石油危機後、「省エネ」がひとつのキーワードとなった時代を背景に、多くの原付カーのメーカーが乱立した当時、その中には市販の原付スクーターのコンポーネンツを流用してFRPボディを被せただけのような原始的な原付カーも見られたが、このCV1は二輪/四輪メーカーのスズキが本気で手がけたモデルだけに、その完成度は非常に高かった。

東京モーターショーでお披露目された後、角形1灯のヘッドライトが丸型2灯式にリデザインされるなどの小改良を経て市販が開始されたCV1。価格は30万円ほどと、47万円の低価格が話題となった初代アルトよりもさらに安価だった。

スズキとしては原付免許で乗れる全天候型スクーター的な乗り物としての普及を考えていたようだが、法規の改正により原付カーの運転には普通免許が必要となったことや、軽自動車と比較してしまうとやはり活躍できるシチュエーションが限られてしまうことなどから、その意気込みとは裏腹に、新時代を担うシティコミューターにはなり得なかった。

結局このCV1を最初で最後の市販原付カーとして、スズキは原付カーのマーケットから撤退するのである。実際に市販された台数は、一説には1981年から1985年までの間に100台ほどといわれる。

マイクロカー・コレクターの元で大切に維持されている個体

ごくまれに中古車販売店や個人売買にひょっこり顔を出すことはあるが、今ではほとんど目にする機会のないスズキCV1。しかし現在ではその希少性や「原付カーの時代」を今に伝える歴史の証人として、一部の好事家の間ではカルト的な人気モデルにもなっている。

今回ご紹介している個体も、そんな熱心なマイクロカー・フリークである中村 清さんの元で大切にされている個体。じつはオーナーの中村さん、このCV1の他にも数々の原付カーを所有しており、今までに自動車専門誌などで幾度も取材を受けられてきた、この世界では有名な御仁なのである。

もちろん取材に伺った際も、ガレージの中にはCV1以外の数多くの原付カーも収まっていたわけであるが、それらは中村さんご本人のエピソードともども、また改めてご紹介していきたい。

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  • 長尾 循(NAGAO Jun)
  • 長尾 循(NAGAO Jun)
  • 1962年生まれ。デザイン専門学校を卒業後、エディトリアル・デザイナーとしてバブル景気前夜の雑誌業界に潜り込む。その後クルマの模型専門誌、自動車趣味誌の編集長を経て2022年に定年退職。現在はフリーランスの編集者&ライター、さらには趣味が高じて模型誌の作例制作なども手掛ける。かつて所有していたクラシック・ミニや二輪は全て手放したが、1985年に個人売買で手に入れた中古のケーターハム・スーパーセブンだけは、40年近く経った今でも乗り続けている。
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