NASCARをイメージしたアメリカンモータースポーツトラック
「T.R.A.KYOTO」が東京オートサロン2024に出展した1台は、ちょっと古めのトラックをベースに遊び心を取り入れたクルマでした。トラックベースのカスタムといえば、最近ではアゲスタイルが大人気で、その他にもローライダーといった昔ながらの楽しみ方がありますが、T.R.A.KYOTOが提案するのは、その枠に縛られることなく自由な発想で挑むスポーツトラックでした。日産「フロンティア」をベースに製作したクルマのコンセプトは、アメリカンなモータースポーツを代表するNASCARです。
あえて日産 フロンティアを選ぶ
近年注目されているトラックベースのカスタムだが、T.R.A.KYOTOが手を加えると他にはないカッコいいマシンに仕上がる。注目すべきはベース車選びで、あえて現行モデルではなく、少し古めの車種を選んでいる点にある。ベース車両の安さはとても大切で、その後に発生するカスタム費用の面も大きいが、何よりも思い切った改造を施そうと思ったら、現行車よりも先代、それよりも先々代の方が大胆にイジれる。要はそのクルマがカッコよく見えるかにあるわけだ。
今回T.R.A.KYOTO流のカッコ良さを追求した結果、NASCARをイメージしたアメリカンモータースポーツトラックというチョイスに至った。そして、ベース車として選んだのは日産「ダットサントラック」の後継モデルであるUS仕様の「フロンティア」だった。
日本では馴染みが薄いが、海外では働くクルマとしてオーソドックスなクルマで、USだけなくUKを含めた世界各地に輸出されている。地域ごとに呼び名も変わるが、アジア圏だと「ナバラ」といったネーミングで親しまれている。
T.R.A.KYOTOに伺った話では、他にも特別なトラックはたくさんあるが、今回は一番オーソドックスなピックアップトラックを使ってカッコよく走るスポーツトラックを表現したかったので、あえてフロンティアを選んだということだった。
具体的な仕様については、そのまんまのレースカーとして作り込むわけではなく、あくまでもストリートを楽しむ1台として製作。カスタムの手法もレースに目を向けた内容ではなく、見た目はNASCARだが、中身はストリートカーとしてパーツをチョイスして装着している。
レーシーなボディペイントの中でひときわ目を引くホワイトのスチールホイールは1990年代に流行ったアメリカンレーシング製の鍛造モデル。ストリートカーらしく6穴ハブのまま取り付け、サイズは前後とも10J×15インチを装着し、タイヤはトーヨータイヤ「R888」のフロント255/50R15、リア235/50R15を履かせている。
エンジンはKA24を搭載
内装も日常使いできるようにエアコンも装着し、ミッションも楽な運転ができるATを採用。あえて変えているといえばシートで、これはNRGという海外メーカーのリクライニングバケットシートだ。詳しく話を聞くと、ポイントはダイヤルではなく、レバーリクライニング機構を採用しているので、純正感覚で使える点だと説明してくれた。
エンジンについては、日産のトラック向けエンジンとして有名なKA24を搭載。日本ではキャラバン等に採用している低トルクが強いパワーユニットだが、基本的に本体はスタンダードのまま、エキゾーストマニホールドやサクションパイプの取り回しを工夫。さらに、配線はすべて引き直し、整備性を良くするために、ラジエターコアサポートを含めたエンジンルーム全体のレイアウトを見直し、綺麗に魅せる仕様にしている。
ここまで作り込む理由として、じつは裏テーマに「アメリカ人が作ったらこんな感じになるんじゃないか」という発想があり、そこから、見る角度や視点を変えながら仕様や取り付け方の最終決定をしていると教えてくれた。
威圧感のあるフロントフェイス
外装については、さりげなくボディキットを装着している。キット構成はフロントがフルバンパー、グリル、フェンダー、サイドステップ、リアフェンダーからなる5点キットで、ロケットバニー製となる。威圧感のあるフロントフェイスと絶妙な張り出し量のフェンダーが、大衆車であるフロンティアをスポーツトラックへと変えてくれる。
また、サスペンションについては4輪すべてをエアサス化させている。そして、リアについては元々のリーフ式だったタイプをイチから作り直し4リンク化させ、マウント位置等もオリジナル設定になっている。
ピックアップトラックをベースに車高を落とすのは大変で、純正ベースではカスタムできることが限れられるので、今回は乗り心地の面、走りの面の両方をよくするために、4リンク化エアサス仕様にしたそうだ。
新たな発想で生み出した、普通のトラックをスポーツトラックに変えるチューニング。次世代のピックアップトラックの楽しみ方として注目してもらいたい。