低価格で魅力的なモデルだった
1991年に登場したトヨタ「サイノス」は、ターセル/コルサ/カローラIIをベースにした2ドアクーペモデルで、グレートは「α」と「β」の2種類をラインアップしていました。1995年にフルモデルチェンジが行われ、2代目になったサイノスも2グレード用意。「α」の新車価格は93.4万円と低価格と魅力的なモデルです。あらためて同車を振り返っていきます。
ベースモデルとスポーティモデルの2グレードで展開
今では一部のスポーツモデルでのみ見ることができるだけになってしまった「クーペ」というボディ形状だが、1990年代くらいまでは、“日常の移動の手段としてスタイリッシュなクーペを選ぶ”ということも珍しくなかった。
これは女性の社会進出が早かったアメリカにおいて、そういったアクティブな女性が気軽に乗れる「セクレタリーカー」としてクーペモデルが人気を集めていたことも影響している。アメリカでは最近までその流れがあったため、シビックなどには北米市場のみクーペモデルが存在していたのだ(ただしシビッククーペは先代型で終了)。
そんなユーザー向けに1991年に登場したのが、トヨタ サイノス(輸出名パセオ)。ベースとなったのはトヨタのボトムラインを担っていたターセル/コルサ/カローラIIの3兄弟で、共通するプラットフォームに2ドアクーペのボディを載せたものとなっていた。
ただベースとなったターセル3兄弟よりもスポーティな性格も持ち合わせており、搭載エンジンは1.5Lのみのチューニング違いだった。105psを発生する通常モデルを「α」に、115psを発生するスポーティ仕様を「β」に搭載。βではリアディスクブレーキや、Gセンサーを用いた電子制御サスペンションの上下G感応TEMSなどがオプション設定されていた。
そして1995年9月にはフルモデルチェンジを果たして2代目へと進化したサイノスは、ベースも1世代新しいターセル3兄弟となった。デザインは初代の正常進化版といったもので、詳しくない人では違いに気付かないほどのキープコンセプトとなっていた。
ただ、バブル崩壊後に登場したモデルということもあり、ベーシック版のαグレードのエンジンは1.3Lにサイズダウン、トランスミッションも4速MT/3速ATとそれぞれ1段少ないものとなっていた。エントリー価格は先代よりも安い100万円切りの93.4万円と低価格となっていたのが大きな違いだ。
ただコストダウン一辺倒かというとそうでもなく、1996年8月には先代には存在しなかったコンバーチブルを追加。このコンバーチブルは日本からコンバーチブル用に補強を施した車両をアメリカに送り、アメリカのASC社の手でコンバーチブル化を施したのちに日本に送り返すという手の込んだ方法を採っていた。
これはセリカコンバーチブルと同じ生産手法だったが、それでも160万円を切るスタート価格となっていたのは今考えるとバーゲンセールと言えるだろう。
そんなサイノスも日本のコンパクトクーペ需要の縮小と、ベースとなったターセル3兄弟の終焉と共に1999年に終売となり、実質的な後継車種のプラッツ(輸出名エコー)には北米市場向けに引き続き2ドアクーペモデルが存在していたが、日本には導入されることはなかった。