適切なギアを探して速く走らせるという楽しみ
クラッチペダルは重すぎず軽すぎず、あくまでも繋ぎやすい。シフトレバーのストロークも程よく、吸い込まれるように入っていく。ひとたびこの感覚を味わってしまうと、2ペダルのPDKがいくら優秀でも買う気にはならない。車重はなんとか1.5トン切り。400ps前後で走らせて楽しいと思えるギリギリの体重だ。
高速道路では最新の911らしく落ち着いたグランドツーリングカーに徹する。3ペダルも全く苦にならない。高いギアでもかなりフレキシブルだ。急加速で無理したりせず、のんびりクルージングにもピッタリ。コックピット周辺の景色は恐ろしく殺風景だけど!
もちろんそんなまったりクルーズの間でもお楽しみはちゃんとあった。ときどき屈伸運動のように手足を使って変速すれば、なんとも楽しい気分転換になる。1つ2つ低いギアに落としてエンジンサウンドを楽しんでみたり、高いギアでの滑らかな加速を楽しんでみたりと、高速道路で使えるすべてのギアを使って遊べてしまう。
RR(リアエンジン・リアドライブ)という今となってはレアな駆動レイアウトであるにもかかわらず、よくできたグランドツーリングカーであるという資質が気まぐれな“お遊び”も支えてくれるのだ。サービスエリアへの侵入路でシフトダウンの決まった時の心地良さったら!
あっという間に京都へ辿り着く。なんだろう、この精神的な時間の短さは。いつもの450kmがとても短く感じられた。実際の所要時間はレクサスとさほど変わらないというのに。そして程よい疲労感。軽いジョギングでいつもより長く走ってみた、という感じ。
大阪でのロケを終えて、神戸の山道を走ってみた。高回転域まできっちりと回しながら、慈しみつつTを操る。3ペダルマニュアルで操って楽しいターボエンジンとギアレシオになっているから、適切なギアを探して速く走らせるという探究的な面白みがある。だから飽きない。賢い2ペダルではまず望めない楽しみ方だ。