ウインドウの数は、マーケットでの相場価格にも反映される?
このほどボナムズ・オークション社が開催した「LES GRANDES MARQUES DU MONDE À PARIS 2024」オークションに出品されたフォルクスワーゲン・タイプ2は、乗用/貨物併用のワゴン版で、前後左右総計で11の窓を持つことから「11ウインドウ」とも呼ばれるタイプ2「コンビ」。現代のエンスージアストにとって望ましい「スプリットスクリーン」を持つ初期型「T1」としては最終年次にあたる、1967年に生産された1台とのことである。
大量生産された実用車の例にもれず、この個体も生産以後のヒストリーは判っていないことが多い。英国では2004年12月から、フランスでは2023年5月から登録されており、いずれかの時期にかなり高度なフルレストアも施されてはいるものの、残念ながらボナムズ・オークション社側でも、出品者である現オーナーもその時期やレストア内容に関する詳細は把握していないとの由であった。
また、現時点でオドメーターが表示している走行距離は9万5909マイル(約15万3500km)、そのうち2010年以降に新たに刻まれたのは1万4876マイル(約2万3800km)とのことながら、このオドメーターは5桁表示のため実際の積算走行距離は定かではない。
それでも、メカニカルコンディションは曰く「例外的なほど」に良好で、現在では入手困難な7席分のシートとグリーンのスモークウインドウはオリジナルのものが装着されるなど、状態およびオリジナル性の面でかなり良好なT1コンビであることは間違いないようだ。
くわえて、2014年から2022年に至る英国「MoT」車検証(最新の有効期限は2023年9月26日)が保管されているほか、同じく英国の「V5C」登録証明書や通関書類も添付。さらにフランス国内における歴史的車両のタイトルを取得するための「FFVE」認証も、すでに申請中とのことである。
この魅力的なタイプ2-T1コンビに、オークショネアであるボナムズは現オーナーとの協議の結果、4万ユーロ~6万ユーロというエスティメート(推定落札価格)を設定した。
ところが2月1日、パリ市内の「グラン・パレ・エフェメール(THE GRAND PALAIS ÉPHÉMÈRE)」を会場として行われた競売では、売り手側が期待していたほどにはビッドが進まなかったようで、終わってみればエスティメート下限を大幅に下回る3万6800ユーロ。日本円に換算すれば、約600万円で落札されるに至った。
最初期型のVWタイプ2といえば、近年では1000万円を大きく超える高値で取引されている事例ばかりが目につくが、それは同じT1でもフロントおよびサイドウインドウの上にも長方形の窓が据えつけられた「サンバ」バスについてのこと。実際、同じく2024年版レトロモビルにて公式オークション「アールキュリアル」に出品された「23ウインドウ」サンバは、こちらの「11ウインドウ」コンビの約2.5倍に相当する9万1784ユーロで落札されている。
空冷VWの世界では「ウインドウの数が価格に比例する」ともいわれるマーケット市況を思えば、今回の落札価格はきわめて順当なものだったかに思われるのだ。