意外と知らない人も多いタイヤの幅について
レーシングドライバーであり自動車評論家でもある木下隆之が、いま気になる「key word」から徒然なるままに語る「Key’s note」。今回のキーワードは「トレッド面とタイヤ総幅の関係」です。タイヤサイズで表記されている3桁の数字は、タイヤの総幅ではなく、路面に接地している面になります。その関係性について、木下さんが解説します。
タイヤの幅は太くても接地面は狭くなることもある!?
「245/45R18」
タイヤにはサイズを表示する数字と記号が刻印されています。
冒頭の「245」はタイヤの幅をmm単位で表示しています。「45」はタイヤの幅に対するサイドの高さの比を、偏平率として%で表示しています。
「R」はラジアル構造を意味し、「18」はタイヤ内径をインチ表示しています。クルマ好きであれば常識的に理解していただいていることと思います。
ここで確認しておきたいのは、一般的にトレッド面と断面幅とは異なる点です。われわれはついつい、タイヤの幅としてトレッド幅=断面幅と誤解してしまいますが、トレッド面はサイドがわずかに湾曲しているために、断面幅より広くなるのが特徴です。
「タイヤを245にしたい。どの銘柄がオススメ?」
先日のことですが、友人にタイヤ選定を依頼されました。せっかく改造するので、タイヤを大きく張り出したいとのこと。フェンダーの擦れる寸前のサイズにしたいというのです。いわゆる「ツライチ」ですね。
そこで、はたと悩みました。というのも、タイヤの総幅が245であっても、ホイールのリム幅によって変化するからです。一般的にリム幅が0.5インチ広がると、偏平率50以上の高さのあるタイヤで5mm程度、45%以下の低扁平タイヤでは約6mm、総幅が広くなります。ですので、ホイールのカタログに記載されている数字だけでは判断できません。どのサイズのホイールと組み合わせるかで回答は異なってしまうのです。
さらに厄介なのは、友人はハイグリップなタイヤをご所望のこと。そのためにはタイヤのトレッド面を調べなければなりません。グリップ性能がタイヤのトレッド面(タイヤが路面に接する面)に比例する傾向にあります。あくまで一般的な話ではありますが、速く走るためにはトレッド面は広い方がいい。ですから、タイヤ幅を表示する「225」であったり「245」といった数字で性能を予測することはできます。
ですが、タイヤサイドの表示を確認すればタイヤの総幅はわかっても、トレッド面の幅は表示されていません。一般的にタイヤの幅と思われているタイヤ幅は、厳密にはトレッド面とは異なるのです。
高いスポーツ性能を得るためには、タイヤの構造やサイドの湾曲具合を理想的にしつつも、トレッド面を広くしたいのですが、そうはならない場合があります。タイヤの総幅は広いけれど、つまりタイヤは太いけれど路面との接地面は狭いという場合もあるのです。そのあたりが、タイヤ開発のエンジニアの腕の見せ所なのです。
ちなみに、「ダンロップ・ディレッツァβ11」の「205/55R16(リム幅6.5)」のタイヤ総幅は217mmですが、「215/45R17(リム幅7)」のタイヤ総幅は、205よりも狭い214mmなのです。逆転しているのです。
ことほどさように、タイヤのトレッド幅や性能は、タイヤサイズの表示だけでは判断できないものです。タイヤ選びは慎重になさってください。