夏タイヤなら100km以上必要
新品タイヤの交換後はナラシ走行が必要です。ナラシ走行をせずにタイヤに負荷をかけると「リムずれ」や「真円度」などが狂ってきます。本来発揮しなければならないタイヤの性能を引き出すためにもしっかりとやっておきたいナラシの方法をお伝えします。
タイヤ交換後は空気圧もチェック
タイヤの取扱説明書やメーカーのホームページを見ると「新品タイヤ装着時にはタイヤがなれるまで夏用タイヤの場合、80km/h以下の速度で最低100km以上、冬用タイヤの場合、60km/h以下の速度で200km以上の走行距離のナラシ走行を行ってください」と書いてある。読者の皆さんは実践しているだろうか。
タイヤのナラシは意外に重要で、ナラシの有無はタイヤの寿命を左右する。なぜなら、タイヤの接地面はミクロで見るとグリップしている部分と滑っている部分があり、新品時に大きな負荷をかけると、滑っている部分だけ先に摩耗し、一部が偏って減ってしまう。そして走行距離が延びるにつれ、その差が開いていき、偏摩耗がひどくなっていってしまうからだ。
またタイヤのゴムやカーカスコードなどの内部構造を安定させ、一定状態に落ち着かせるのもタイヤのナラシの大きな目的だ。
工場から出荷されたばかりの新品タイヤはホイールに組み、はじめて空気を入れるとタイヤ全体がストレッチされ、タイヤの構造部材が若干膨張する。そして実際に走り始めることでようやくゴムやカーカスコードなどの内部構造が安定し、ゴムが伸びたり縮んだりすることで余分なストレスが除去され、本来の性能や一定の性能を発揮する。
とくに新品タイヤを組み込んだ、最初の24時間はタイヤ内の空気の圧力によってタイヤのコードが伸び、タイヤの内容積や幅、外径などが数%変化するほど。これをタイヤの成長=寸度成長といい、このタイミングでタイヤに大きなストレスをかけると、異常発熱によって損傷を起こしやすくなるので要注意。まずは、新品タイヤを組んだらその翌日から1週間以内に再度空気圧を調整しておくようにしよう。
ちなみに新品タイヤの表面には、金型から取り出しやすくするためにワックスのような剥離剤が塗ってあり、それが滑りやすいため、表皮を一皮剥くのがタイヤのナラシの目的という説があるが、いわゆる皮むきだけなら近所をひと回りするだけで済んでしまうため、それがタイヤのナラシの目的ではない。
タイヤとリムが馴染むまでにも時間が必要
もうひとつ、新しいタイヤの特性にドライバー自身が慣れるというのも、わりと大きな意味合いがある。同じ銘柄でも、新品タイヤとすり減った古いタイヤでは性能の開きがあり、銘柄を変更した場合はもっと大きな違いがあるため、ニュータイヤの感覚に慣れるまでは、プッシュするような走りは控えておくのがいいだろう。
さらに、タイヤとリムが馴染むまでにも時間が必要だ。タイヤとホイールを組む際は、ビート部などにビートクリームを塗って組みやすくするわけだが、その反面、交換した直後は、タイヤとホイールの位置がずれやすくなる。いわゆる「リムずれ」が起きやすい。リムずれが起きると、せっかく合わせたウエイトバランスもずれるし、真円度だって狂ってしまう……。
したがって、リムと馴染んでフィット感が出てくるまで、できるだけ強いブレーキや急発進は避けること。とくに低速トルクが大きいクルマや4WD車で、夏場にタイヤ交換をした場合は優しい加速を心がけよう。このようにタイヤのナラシはとっても重要だが、それほど難しいことではない。
冒頭でも触れたが、新品装着後は少なくとも100kmまでは過激な走りをせず、80km/h以下で優しくスムーズな運転を心がけるだけでOK(スタッドレスは60km/h以下の速度で200km以上)。もし、ピンとこない人は、新しい靴を買ったときのことをイメージしてみてほしい。
新品の靴でいきなり長距離を歩いたり、運動競技に使ったりすると、足が靴と擦れやすいため、踵などに「靴ずれ」が起こりやすいはず。靴も足にしっかり馴染むまでは、短距離、短時間の歩行を何度か繰り返す、ナラシ歩行が必要なように、タイヤもホイールとクルマ、そしてドライバーに馴染むまでは、じっくりナラシ走行を行いたい。