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「400R」の上行く「スカイラインNISMO」は2周まわって「ハコスカ」? 日産は諦めていなかった【東京〜京都試乗】

前後バンパーやサイドシルカバーは専用パーツを採用。ニスモ専用フォグランプやエンブレムも備わっている

スカイライン好きも納得のハイパフォーマンスモデル

日産の現行「スカイライン」に、高性能モデル「400R」のさらに上をいくパフォーマンスを備えた限定モデル「スカイライン NISMO」が登場しました。一時期はスカイラインを諦めていたというモータージャーナリストに西川 淳氏も納得の「スカイライン好きを呼び覚ますに十分な性能」が備わっています。

紆余曲折のスカイラインとの長い付き合い

私はスカイラインが好きだ。おそらくクルマメディア・ギョーカイのなかで最もスカイラインを買ってきたんじゃないだろうか。何せ社会人になって以来、R30からV36まで乗り継いだのだから。

そもそも免許を取って公道で初めて運転したマニュアル車が「ジャパン」だった。初めて買ったクルマこそ「セリカXX」だったけれど、新車初はR31だ。そしてこのギョーカイに来てからR30、R32〜が続く。

GT-Rを筆頭に、ずっと2ドアクーペだった。34から35になったとき、世の中のスカイラインファン同様、釈然としない気分(V6だから、ではなく、スカイラインとして開発されてなかったから)で乗り換えを渋ったものだけれど、クーペが出ると我慢できなかった。「35なんてスカイラインじゃない!」という気分を吹き飛ばしてくれるほどかっこいいクーペだったから。

とはいえスカイラインといえば本来的には4ドアだ。ハコスカはその象徴。35から36へ、そのとき人生で初めて「ハコスカ」=4ドアのスカイラインを買った(ガレージにR35がいたからでもあった)。色々と批判のあったモデルだけれど、デザイン含め、私は気に入って乗っていた。エンブレムをインフィニティに代えてイキったものだ。

V37(現行モデル)が登場したとき、当時のデザイントップだった中村さんが「これはハコスカの再定義なんだよ」なんてことをおっしゃっていた。なるほどな〜とはあまり思わなかったけれど、嫌いなカタチでもなかった。

とはいえ結局、日本ではクーペを出さなかったこともあって、V37を検討することさえなかった。なんとなく潮時だと思ってしまったのだ。スカイラインという名前は続いてほしいけれど、欲しいスカイラインじゃなくなってきたように思えた。だってはじめからインフィニティバッジつけちゃってたんだぜ? 先代よりインフィニティ主導であることは百も承知だったけれど……。

日産はスカイラインを諦めない

2013年のデビュー以来、V37には他にも色々な事件があった。ハイブリッドV6だけでスタートしたし、メルセデス・ベンツのエンジンも積んだ。ステア・バイ・ワイヤーを仕込んだり、プロパイロット2.0で手放ししたりで大いに話題もさらった。けれどもそんなトピックに触れるたび、私のスカイライン熱は一層冷めていく。正直、テストするのも嫌な時期があったくらいだ。

面白いことに日産バッジに変わった2019年以降、スカイラインが帰ってきたように思えてきた。世の中SUVスタイルが全盛で、こういう形(3ボックス)のセダンルックそのものがレアになりつつあったからかもしれない。スカイライン クロスオーバーは早すぎたのだが、結果的にセダンだけが残ってかえって新鮮に見え始めた。2周まわってハコスカの時代が帰ってきたのだ! そして今や日産唯一のセダン(さびしー)。

日産はスカイラインを諦めない。SUV化か? いや、BEV化じゃないか? いろんな憶測の飛び交うなか、400Rという今どきの時代に逆行(=クルマ好きの順行)するド根性モデルを発表する。ネーミングにはいささか「勿体なさ」(ここで使ってしまうんかい! )を禁じ得ないものの、スカイライン好きを呼び覚ますに十分な性能が備わっていた。

そして今回の主役、ニスモだ。400Rのさらに上をいくパフォーマンスで400Rオーナーを地団駄踏ませたわけだが、それこそスカイラインらしさというものだ!(昔はもっと酷かったぞ)

スカイラインは日本で最も良くできたGTでなければならない

というわけで、真っ赤なニスモ(92/1000)を借り受けて、いつものように東京〜京都をドライブした。

下半身だけゴテッとさせたセダンルックがもうすでにノスタルジックだ。SUVでは絶対こんな感じに見えてこない。やんちゃなおやじスタイルとでも言おうか。若い世代にはかえって新鮮に映るかも。私はアラカンのオッサンなのでかなり刺さります。マツダのクルマより激しい赤もこのスタイルには合っている。

コクピットの雰囲気も今となってはすでにクラシック。デビューしたときすでに「新しくないなー」と思ったデザイン、2周回って旧車好きに安心感を与えてくれるようになった。デジタルコクピットに慣れた方には一風変わって見えるだろうが、それもまた魅力だ。

走る。強烈な立ち上がりと中間域での分厚いトルクはアクセルひと踏みで400Rとの違いを実感させるに十分だ。やや過敏なくらいが過激なセダンキャラにマッチする。高回転域での「シャン」と回る感じも心地よい。

太いタイヤがしっかりと地面を掴む。ハードさと相まってボディ幅をナローに感じる。要するにドライバーにとっては昔のスカイラインセダンを思い出させる車体感覚だ。ドライバーの感じるボディサイズが34くらい、といえば分かりやすいか。とにかく車体の大きさを感じさせないので、ハコスカ感は400Rよりいっそう増している。

高速域では見事なGT(グラントゥーリズモ)だ。ライドフィールも快適で、安定感もある。センター付近であやふやなフィールがなく、安心してクルーズしていける。スカイラインは日本で最も良くできたGTでなければならない。

いつものワインディングロードで少し遊んでみた。GT-Rグレードを除けば、スカイライン史上もっとも速く楽しいセダンであることは間違いないと思った。

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