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ポルシェ「911カブリオレ」が1360万円で落札! 相場よりも高額だった理由は特注純正カラーのオシャレな個体だったから

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TEXT: 武田公実(TAKEDA Hiromi)  PHOTO: 2023 Courtesy of RM Sotheby's

オシャレなカラーにも条件がある?

この1988年式ポルシェ911カレラ・カブリオレは、希少なファクトリーカラーである「グラニットグリーンメタリック(L699)」で仕上げられた1台。美しくコーディネートされたインテリアには「リネン」の本革レザーが使用され、ダークグリーンのダッシュボードがエクステリアを引き立てる。また、特注の「グレー・グリーン(F3V7)」のファブリック製ソフトトップとトノーカバーが、洒脱なカラーを引き締めている。

もともとはメリーランド州ロックヴィルに納車され、新車からのオーナーはわずか2人。保存状態は素晴らしいレベルにあり、カタログ掲載時の走行距離は3万100マイル強(約4万9000km)で、2022年6月に現オーナーが初代オーナーから譲り受けたのちには、ほとんど運転されていないという。

この911カレラ・カブリオレは、非常にオリジナリティが高いと理解されており、さらにエアコン、パワーウインドウ、ヒーター付きパワーアジャスタブルミラー、一体型フォグランプなど911カレラ時代の主要装備が完全に残されている。

さらにスポーツダンパーにストローク短縮型のシフトレバー、16インチの鍛造フックス製ホイール、電動ソフトトップ、クルーズコントロール、ブラウプンクト社製ラジオカセットシステムなど、愛好家の間では望ましいとされる純正オプションが工場出荷時から装備されているのも重要なトピックだろう。

車両に添付されるヒストリーファイルには、1988年まで遡る正規ディーラーからのオリジナルの購入書類とサービス請求書が含まれており、2000年代に「ロックヴィル・ポルシェ・アウディ」社にて定期的に整備され、2003年にはメリーランド州のボディショップで左フロントフェンダーの小さなダメージが修理されたとのこと。最近では、2020年にバッテリーの交換と計器の修理、2021年にオイルラインとタイヤの交換が行われたことなどが仔細に記されている。

1980年代の930系911のなかでも、カブリオレは比較的安価な価格で流通しているのが通例ながら、ことアメリカではオープンモデルの人気が高く、しかもここは陽光溢れるフロリダである。

それでもRMサザビーズ北米本社が、現オーナーとの協議の結果として設定した7万5000ドル~9万5000ドルというエスティメート(推定落札価格)は、一般的には5~6万ドルの流通の多い930カブリオレとしては、なかなか強気なものにも見えた。

ところが、実際のオークションではビッド(入札)が順調に伸び、終わってみれば8万9600ドル、日本円に換算すると約1360万円という高値で落札されたのは、2オーナーであることに代表される来歴やコンディションもさることながら、このシックきわまるカラースキームの影響も小さくないと思われる。

とはいえ、たとえオシャレなカラーリングであろうとも、市井のボディショップが独自に施した、ポルシェのイメージからかけ離れたセンスのカラーでは市場を動かすには至らない。

もっとも望ましいのは、メーカーが新車時代から設定していた純正のオプションカラーであること。もしそうでないとしても、かつて純正(ないしはオプション)指定されたことのあるカラーで、正しくペイントされていることが高値の条件となる。

今回のハンマープライスは、そんな実情を証明した結果であろう。

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  • 武田公実(TAKEDA Hiromi)
  • 武田公実(TAKEDA Hiromi)
  • 1967年生まれ。かつてロールス・ロイス/ベントレー、フェラーリの日本総代理店だったコーンズ&カンパニー・リミテッド(現コーンズ・モーターズ)で営業・広報を務めたのちイタリアに渡る。帰国後は旧ブガッティ社日本事務所、都内のクラシックカー専門店などでの勤務を経て、2001年以降は自動車ライターおよび翻訳者として活動中。また「東京コンクール・デレガンス」「浅間ヒルクライム」などの自動車イベントでも立ち上げの段階から関与したほか、自動車博物館「ワクイミュージアム(埼玉県加須市)」では2008年の開館からキュレーションを担当している。
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