再びバイクに触れたことで喜ぶ姿が見られた
一般社団法人SSP(サイドスタンドプロジェクト)が開催しているパラモトライダー体験走行会は、交通事故などによって、再びバイクに乗ることが叶わなくなった元ライダーに、もう1度バイクに乗る楽しさを体験してもらおうという企画です。そのSSPによる2024年最初の体験走行会が神奈川県平塚市にある平塚競輪場で開催されました。レポートをお届けします。
初めて競輪場での開催へ
パラモトライダー体験走行会を主催するSSPは、レジェンドライダーとして知られる「青木三兄弟」の三男である青木治親が立ち上げた一般社団法人。治親はWGP(ロードレース世界選手権 現MotoGP)のGP125クラスで1995年、1996年に2年連続タイトルを獲得した世界チャンピオンである。2004年にオートレース選手に転身し、現在はオートレーサーとして活躍している。
同走行会は、事故や病気によって身体の自由が利かなくなってしまった元ライダーに向けたバイクの体験走行を行うイベントである。障がいによって2輪免許を失ってしまった方たち向けに、サーキットや休校日の自動車教習所、さらには広い駐車場など、バイクを走らせることができるクローズドコースで行われている。
また、毎年秋には箱根ターンパイクをSSPが占有して実際の公道再デビューの機会も設けている。当初は事故などでバイクを降りてしまった元ライダーが対象であったが、現在では先天的な障がいによってバイクに触れたこともない参加者も広く受け入れている。
3月12日(火)、2024年最初の開催となったパラモトライダー体験走行会は神奈川県平塚市にある平塚競輪場、通称ABEMA湘南バンクを会場として開催された。SSPのイベントとしては初開催となる施設であった。
青木治親がオートレーサーとして活動しているため、これまで茨城県にある筑波サーキット内にあるオートレース選手養成所で開催されたことはあったが、競輪関連施設での開催は初めてとなる。
バイクにまたがっただけで涙腺が緩んでしまった参加者も
公営競技の競輪とオートレースを統括する公益財団法人JKAの関連での開催かと思いきや、実はそうではなかった。今回のこの開催に際し、現場に入った平塚市の担当者から話を聞いた。ちなみに競輪場は平塚市の施設である。
「JKAとの関連はありますけど、実際のところは、SSPの青木さんから場所を探している、競輪場でイベントができないかという話を直接いただいたことがきっかけになりました。平塚市としましては、以前より競輪場活用推進事業として地域に開かれた親しみやすい競輪場を目指していて、本場開催や場外発売日以外の非開催日に限られますが、これまでもさまざまなイベントにこの場所を提供しています。今回の体験走行会は、大変素晴らしい社会貢献活動でありましたので、ぜひ使ってくださいということで、今日のこの日程での開催となりました。
実際に参加されている方はもちろん、ボランティアの方々を見ていて、とてもいい笑顔で参加していて、すごく良い活動だなと改めて思った次第です。また今回は市の障がい福祉課にも協力してもらい、平塚市内の障がい福祉事業所で作られたパンの出張販売も行いました。今日はあいにくの天気でしたが、これからも引き続き開催をしていっていただけたらと思っています」
体験走行会はまずバイクを操ることができるのか? を確認しながら進めていく。中型バイクにアウトリガーを装着した車両を使用し、最初はエンジンを掛けずにボランティアスタッフがバイクを押す。そこからまっすぐ走れるように練習をしたうえで、実際にエンジンを掛けて自身のアクセル&ブレーキ操作で走行を重ねていく。問題がなければ、補助輪がより浮いた状態のアウトリガーに交換して補助輪を地面につけることなく走行ができるところまで、1人50分ほどの時間で体験をしていく。
今回は脊椎損傷の2名、左上肢完全麻痺、そして視力障がいという4名のパラモトライダーが参加した。30年以上ぶりのバイクに前夜なかなか寝付けなかった参加者がおり、さらにバイクにまたがっただけで涙腺が緩んでしまった参加者がいたり、再びバイクに触れることになったことを純粋に喜ぶ姿が見られた。
いずれも次回以降の参加も希望しており、さらにステップアップを目指していくことになる。次回のパラモトライダー体験走行会は千葉県の袖ヶ浦フォレストレースウェイで2024年4月19日(金)に開催の予定だ。