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AGSのスズキ「アルト」でMT車に負けない走りを披露! 軽自動車レース「東北660選手権」の注目選手を紹介

ウェットでの走り

荷重移動やブレーキングの基本を改めて学んだおかげで、ウェット路面でも自信を持ってドライブできた最終戦。大きな転機となった

破竹の勢いでレースもプライベートも充実する注目株

2024年4月14日(日)に宮城県・スポーツランドSUGOにて開幕戦を迎える東北660選手権。2023年シーズンの大きなトピックは4クラスが激増したことで、その大半をHA36型スズキ「アルト」のAGS(2ペダル)が占めるという状況だった。同じHA36ばかりか熟成が進んだCVTやATを相手に、圧倒的な強さを発揮しチャンピオンに輝いたのは、2ペダル車で走ることすら初めてだった猪又真輝だ。2024年シーズンの注目選手を紹介しよう。

プライベーターから卒業してさらにレベルアップした

同じ車両で参戦できる東北660・HA36カップの2クラス(AGSとCVT)も制し、新星の如く現れたAGS使いとしてベテランからも一目を置かれる存在になった。とはいえデビュー時から順風満帆だったワケではない。当初は車両製作からメンテナンスまでほぼプライベート、マシントラブルによる大きなクラッシュも経験している。

そんな猪又を自チームのエースドライバーとして起用したのが、油脂類メーカー『ネクザス』の代表で自らも参戦する大森宣正だ。車両を貸し出すことに加え現場のメンテナンスなども請け負い、資金的にも精神的にもドライバーに専念できる環境を作り上げ、猪又もそれに見事に応えてふたつのカテゴリーで結果を出し続けた。

それぞれのリザルトを振り返ってみよう。東北660選手権の4クラスは全4戦の3戦で優勝、残りの1戦も2位で着実にポイントを積み重ね、大森とタッグを組んだ特別戦でも優勝している。さらに東北660・HA36カップは全3戦をすべて優勝。まさに『猪又イヤー』と呼びたくなる1年だった。

まだ27歳である猪又はモトクロスをライフワークとする両親の下に生まれ、高校時代はハンマー投げで県1位となりインターハイに出場した過去を持つ。東北660選手権に初めて参加したのは2019年で、2021年からはチーム・ネクザスに加入する。2022年まではHA23で3クラスに参戦、HA36に乗り換えたのは2023年からだ。クラッチなしのAGSを「確かにクセはあります」と分析する猪又だが、地道な練習を重ねるなかで徐々に独自のテクニックを身に付けていく。

スキルアップして走りに磨きをかけた

ターニングポイントと語るのは念願の初優勝を遂げた開幕戦ではなく、終日ウェット路面だった最終戦(HA36カップは併催で第2戦)だ。その少し前にプロドライバーによるドライビングレッスンに参加し、今まで意識してなかったブレーキや荷重移動の欠点を知ったという。それらを実践しスリッピーな雨のなかでも自信を持って走行でき、両カテゴリーで練習・予選・決勝と一度もトップを譲ることなく、ポールポジションとファステストラップも獲得するという完全勝利を成し遂げた。

もうひとつの注目したいポイントは東北660・HA36カップにおいて、MTでスタートが有利なはずの1クラスよりも上でゴールしたこと。舞台となったエビスサーキット西コースは抜きどころが少なく、厳しい車両規定でマシンの戦闘力にも差がほとんどないため、スタートで前に出られてしまえば抜き返すのは至難の業なのだ。

「このときに新しいスタートの方法を試してみたんです。決して特殊なことじゃないと思うけどたぶん僕しかやっていないと思うし、ドライバーとしてはライバルの大森さんにも教えていません(笑)」

と話す猪又。車両にしろ運転にしろまだまだHA36のAGSは進化の途中と考えており、今シーズンもふたつのカテゴリーに参戦してさらなる高みを目指しつつ、チーム・ネクザスとして若手を束ね東北660耐久レースにも参戦する。

また、2023年はプライベートでも大きな転機があった。猪又が大きな転機だったと振り返る最終戦の少し前に結婚し、当日は奥さんがエビスサーキットで優勝の瞬間を見守った。クルマやレースにはまったく無縁の奥さんから、マジメに取り組んでいる趣味と認められ、表彰式の後にはチーム員たちと記念撮影も。奥さんからレーシングスーツをプレゼントされ、今シーズンの目標はモチロン両シリーズの連覇だ。

さらに引き出しを増やしそうな猪又がぶっち切るのか、それとも新たな2ペダル乗りのヒーローが登場するのか。4月14日の東北660選手権・開幕戦は要チェックだ。

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