逆風の日本メーカーも電動化モデルを続々と発表
数年前まではタイの自動車市場は、新車販売台数の9割を日本メーカーが占める日本車王国だったが、中国系EVメーカーが続々と参入したことでシェアを落としてきている。2023年の日本メーカーのシェアは前年比-7.6%の77.8%となり、販売台数も約60万3000台で前年比-16.8%の落ち込みをみせている。
そんな中、今年のバンコクモーターショーでは日本メーカー各社がBEVやHEVへの取り組みをアピールしていたのも重要なトピックだ。
2023年のタイでの新車シェア34.3%と、依然として不動の横綱であるトヨタにとって、ピックアップトラックが人気のタイ市場でのフラッグシップモデルは、タイ工場で生産している「ハイラックス」(タイでは「ハイラックス レボ」の名で販売)だ。2024年バンコクでトヨタはハイラックスのフェイスリフトを発表するとともに、2025年末までにハイラックスのEVモデルの量産開始を目指すと表明した。
そして日本では乗用車から撤退しているものの、タイ市場ではトヨタに次ぐ19.6%(2023年)のシェアを誇るいすゞも、主力製品であるピックアップトラック「D-MAX」のBEVのコンセプトカーをバンコクで初公開した。動力源の選択肢のひとつとしてD-MAXのBEVの開発を進め、2025年にノルウェーなど欧州の一部で販売を開始し、その後タイなど各地域でも展開していくという。
ホンダはコンパクトSUVの新型BEV「e:N1」を初公開した。これは中国市場で2022年に東風ホンダ(合弁会社)が発売したBEV「e:NS1」ならびに「e:NP1」のタイ仕様にあたり、2023年12月からタイ東部プラチンブリのホンダ工場で生産がスタートしていたモデル。当面は一般販売はせず、現地の大手レンタカー会社経由で定額リースしていくとのこと。
そして日本市場にピックアップトラック「トライトン」が上陸したばかりの三菱自動車は、3列シートのミニバン「エクスパンダー」と「エクスパンダークロス」が東南アジア市場で絶大な人気を誇るドル箱モデルとなっている。今回のバンコクモーターショーでは、ハイブリッド仕様の「エクスパンダーHEV」/「エクスパンダークロスHEV」を初公開した。ファミリーで移動できる3列シートと十分な最低地上高を備えたエクスパンダーシリーズは、東南アジアの舗装路の少ない地域で活躍している。燃費と航続距離をハイブリッドシステムで改善することで、さらなる実用性をアピールしようというわけだ。
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一番人気がピックアップトラックで、日本とは全く異なるクルマ生態系をもつタイ市場。EV化を巡ってはわが国よりはるかにダイナミックな波が押し寄せていて、日本メーカーもさまざまな可能性を模索している最中といえる。バンコクモーターショーで日本勢に勝るとも劣らない存在感と勢いをみせていた中国、韓国、ベトナムのEV新興勢力については、また稿を改めてレポートする。