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BMW初代「M3」が2880万円! 高額の理由は786台しか製造されなかった貴重な「M3カブリオレ」だったからでした

BMW初代「M3」が2880万円! 高額の理由は786台しか製造されなかった貴重な「M3カブリオレ」だったからでした

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TEXT: 武田公実(TAKEDA Hiromi)  PHOTO: 2023 Courtesy of RM Sotheby's

スポーツ エボリューションにも負けない落札価格の理由とは?

このほど、RMサザビーズ北米本社の「MIAMI 2024」オークションに出品されたM3コンバーチブルは、1989年6月にバイエルン州ランツベルクの「BMWオートハウス・シャウンベルガー」に新車として納車された、ドイツ市場向けのモデルである。

ボディカラーは「マカオ・ブルー・メタリック」でソフトトップはブラックのファブリック生地製。インテリアは当時のM3ではオプションだったブラックの本革レザーという素晴らしいカラーコンビネーションで仕上げられている。

筆者の記憶が確かならば、この年式のスタンダードM3はすでに通常のHパターンを持つZF社製5速MTに切り替えられていたはずだが、コンバーチブルには初期型M3セダンおよび「エボリューション」系限定モデルと同じ「ドッグレッグ」パターンの5速ゲトラグ社製トランスミッションが選択されていた。それはこのオープン版M3が、あくまでBMW M主導で開発されたという歴史的事実にとっての、ひとつの証といっても良いかと思われる。

くわえて「BMW Bavaria C」カセットステレオ、ヒーターつきスポーツシート、オンボードコンピューター、Mスポーツ・ステアリングホイール、ブラックのファブリック製トップ、軽量アロイホイールなどの純正オプションが新車オーダー時から豊富にセレクトされているのも、この個体における重要なトピックといえるだろう。

ラインオフからすでに35年の時を経たM3コンバーチブルながら、この個体は新車時からのオーナーがわずか2名で、さらにオークション公式ウェブカタログ掲載時の走行距離も3980kmに過ぎない。そのローマイレージを裏づけるように、コンディションは内外装からエンジンルームに至るまで素晴らしいものであることが、ウェブカタログの写真からも見受けられる。

また、今回のオークション出品に伴い、純正のスペアタイヤにツールキット、オリジナルの販売インボイスを含むヒストリーファイル、Fahrzeugbrief(ドイツの自動車登録書)、取扱説明書/サービスマニュアル一式なども付属されていたとのことである。

「ワールドチャンピオンの血統を持つBMW初のホモロゲーション・コンバーチブルの、驚くべきタイムワープ」、そんな扇情的なキャッチフレーズとともに、RMサザビーズ北米本社は15万ドル~20万ドルというエスティメート(推定落札価格)を設定。そして、当日の競売ではエスティメート上限に迫る19万400ドル、現在の為替レートで日本円に換算すると約2880万円という、なかなかの高値で落札されるに至ったのだ。

近年のヤングタイマークラシック人気にあって、E30系M3が世界的人気モデルのひとつであることは、誰もが認める事実であろう。とくにクラシックカーマーケットにおいて相場をけん引していたのは、ハードコア指向の高い「エボリューション」系リミテッドエディションだった。

でも今回のオークション結果にも表れているように、一時はE30系M3の「亜流」とも見なされていたはずのコンバーチブル(カブリオレ)もまた、「M」の血統を色濃く体現した量産外のM3として認知されつつある……、ということなのであろう。

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  • 武田公実(TAKEDA Hiromi)
  • 武田公実(TAKEDA Hiromi)
  • 1967年生まれ。かつてロールス・ロイス/ベントレー、フェラーリの日本総代理店だったコーンズ&カンパニー・リミテッド(現コーンズ・モーターズ)で営業・広報を務めたのちイタリアに渡る。帰国後は旧ブガッティ社日本事務所、都内のクラシックカー専門店などでの勤務を経て、2001年以降は自動車ライターおよび翻訳者として活動中。また「東京コンクール・デレガンス」「浅間ヒルクライム」などの自動車イベントでも立ち上げの段階から関与したほか、自動車博物館「ワクイミュージアム(埼玉県加須市)」では2008年の開館からキュレーションを担当している。
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