新車でカタールに納車されたモデル
2024年3月1日〜2日、RMサザビーズがアメリカ・マイアミで開催したオークションにおいてランボルギーニ「ムルシエラゴLP640-4ロードスター」が出品されました。走行距離は2836kmと少なく、カーボンセラミックブレーキやリアビューカメラなど、多くのオプション装備が選択されています。気になるハンマープライスはいくらだったのでしょうか。
アウディ主導で初めて登場したモデル
ランボルギーニがアウディ・グループに収まって、すでに四半世紀以上の時間が経過した。創立からこれまでの60年以上の歴史を振り返っても、ランボルギーニの経営がここまで安定して続いた時代はこれが最長で、創立60周年にあたる2023年は総販売台数も1万台を超え、正確には1万112台、対前年比でプラス10%の成長を遂げるまでに至っている。アウディがランボルギーニを手中に収めた1988年。その四半世紀後に現在のランボルギーニの姿を想像できた者は、いったいどれだけいただろうか。
ここで紹介する「ムルシエラゴ」は、アウディの主導で初めて誕生した完全な新型車だった。標準ボディとなるクーペの発表は2001年のフランクフルト・ショーでのこと。それはもちろん1990年から2001年まで生産された「ディアブロ」の後継車となるモデルで、ランボルギーニはアウディ・グループへ再編される以前に、すでにいくつかの後継車の案を持ち合わせていたが、それらはすべてキャンセルされ、新たにムルシエラゴが市場に投じられることになったのだ。
デザインは当時ランボルギーニのチェントロ・スティーレ(デザイン・センター)でチーフ・スタイリストの職にあった、ルーク・ドンカーヴォルケ。一方そのメカニズムの基本的な成り立ちはディアブロというよりもさらに世代をさかのぼって、パオロ・スタンツァーニによって生み出された「カウンタック」に等しく、6.2Lに排気量拡大されたV型12気筒エンジンと6速ギアボックスからなるパワーユニットは、車体後方からキャビンに向けて前後逆方向に搭載された。注目の最高出力は588ps、最大トルクは650Nmを発揮し、駆動方式はビスカス・カップリングを用いた4WDのみを設定していた。
トランスミッションは2ペダルのeギア
そのムルシエラゴに、オープン仕様のロードスターが追加、正式に発表されたのは2004年のジュネーブ・ショーでのことだった。ボディの強化はもちろんのこと、サスペンションやブレーキも専用の仕様を採用。さらに2006年のジュネーブ・ショーでは、V型12気筒エンジンを6.5Lに排気量拡大し、最高出力で649ps(640hp)を得たモデルに進化を果たし、車名も「ムルシエラゴLP640-4ロードスター」へと改められた。「LP」がエンジンの縦置きミッドシップを、それに続く「4」は4WDの駆動方式を表していることは、ランボルギーニのファンにはすでにお馴染みなところだろう。
今回RMサザビーズのドバイ・オークションに出品されたムルシエラゴLP640-4ロードスターは、新車でカタールに納車されたモデル。メタリック・レッドにブラックのソフトトップ・ルーフ、コントラストステッチが施された、鮮やかなレッドとクリームからなるレザーインテリアなど、じつにカラフルで刺激的な趣きの1台に仕上がっている。トランスミッションは2ペダルの6速、すなわちeギアで、現在までの走行距離も2836kmという新車に近いコンディションが保たれた1台だった。カーボンセラミックブレーキやリアビューカメラなど、多くのオプション装備が選択されているのも、次のオーナーには嬉しいところだろう。
25万~30万ドル(邦貨換算約3725万円~4470万円)のエスティメート(予想落札価格)を掲げて始まったオークションだが、残念ながら今回はそれに応札する落札者は現れないまま、このムルシエラゴLP640-4ロードスターは流札してしまった。ちなみに現在でもRMサザビーズでは、このモデルを価格応談で販売中であるから、おそらくはそう遠くないうちに新たなオーナーは決まるのだろう。この個性的なロードスターは、温暖な気候の中でオープントップの走りを楽しむ理想的なパートナーとして、次のオーナーを待っている。