中国でも販売されていたミラージュディンゴ
三菱が1999年に販売開始したコンパクトカーが「ミラージュディンゴ」でした。車名こそ「ミラージュ」ですが、ベースは同車ではなく、新開発のプラットフォームが採用されていました。前期型は個性的なフロントマスクが特徴的で、後期型はマイルドなデザインに変更されています。
フルフラット化が可能なシートレイアウトを採用
「ミラージュ」といえば2002年まで販売していた三菱のコンパクトカーであり、古くはワンメイクレースが開催され、ホンダ「シビック」と並ぶテンロクホットハッチとしても人気を博したモデルだ。またジムカーナやダートトライアルといったモータースポーツでも人気があり、クーペスタイルの「ミラージュアスティ」とともに未だに根強いファンが存在する1台となっている。ただそんなミラージュの名前を冠した派生車の中には、モータースポーツとは全く無縁のものも存在していた。それが1999年1月に登場した「ミラージュディンゴ」である。
このミラージュディンゴはコンパクトなボディサイズをもったトールワゴンとなっており、同時期に存在していた「トッポBJ」の兄貴分的なスタイル。ただフロントマスクは非常に個性的で、丸形のヘッドランプを縦に配した異径ヘッドライトが異彩を放っていた。
そんな個性的なルックスとは対照的にクルマとしては非常にマジメに作られており、とくに子育て世代のユーザーをターゲットにしており、畳んだベビーカーを立てかけて固定できるアタッチメントや、後席のチャイルドシートに座る子どもを振り返ることなく確認できる「赤ちゃん見えるミラー」を備えたモデルなどもリリースされていた。
またセンターコンソールを廃してコラムシフトとすることで、前後左右のウォークスルーを実現していたり、フルフラット化が可能なシートレイアウトなど、コンパクトでありながらフレキシブルに使うことができる実用性も兼ね備えていたのだ。
当初は実用車らしく1.5Lの直列4気筒エンジンをラインアップしていたが、2000年1月にはより安価な1.3Lモデルを追加し、その翌月には1.8Lエンジンやローダウンサスペンションやエアロパーツを装着したスポーティなグレードも追加するなど、ワイドバリエーション化を図った。
しかしその個性的すぎるルックスに難色を示すユーザーが少なくなかったのか、2001年2月のマイナーチェンジでは前後のデザインをマイルドで一般的なデザインに変更(エアロ系グレードのみ従来型のフロントマスクを採用)。1.5Lモデルのトランスミッションを4速ATからCVTにするといった変更を実施している。
しかし前年に発覚したリコール隠しの不祥事の影響などもあって販売は下降線となり、2002年春には生産を終了。マイナーチェンジ後のモデルは非常に短命に終わってしまった。
なおこのミラージュディンゴは2001年ごろから中国の哈飛汽車(ハーウェイモーター)で賽馬(サイマ)という車名でライセンス生産・販売がなされていたが、哈飛汽車自体が2014年ごろに経営不振に陥り、サイマを含む同ブランドの全車種が終売し会社も解散となっている。