バンコク市内のスズキディーラーを直撃してみた
バンコクモーターショーのスズキブースには他にも見どころが多かった。XL7同様に3列シート7人乗りミニバン「エルティガ」にも「スマートハイブリッド」が登場。また、日本でも販売されていた「SX4」の後継となるセダン「シアズ」や、2019年からインドネシアで生産されている東南アジア仕様「キャリイ」(日本の軽トラとは別物)の移動ネイルサロンも展示されていた。
そんな中、日本でも売れるかも? と思わせる小ぶりでちょっとお洒落なコンパクトカーが「セレリオ」だ。インド生産でボディサイズは全高3600mm×全幅1600mm×全高1540mmでエンジンは直列3気筒1000cc。スズキのインドにおける主力車種「アルトK10」とほぼ同等のスペックで、タイにはこちらのセレリオだけ導入されていて、スイフトの弟分といった存在となっている。現行型セレリオは2021年に導入された3代目で、20km/Lの低燃費と、33万8000バーツ(約143万円)という低価格が売りだ。
バンコクモーターショーの取材の後、空き時間にバンコク南西部の国道沿いにあるスズキディーラーに飛び込んで、最近のタイでのスズキ車のトレンドを聞いてみた。「Suzuki D4CarCity」という、スズキディーラー歴31年の老舗だ。応対してくれたのは創業した親から店を引き継いだという若き2代目オーナーさん。
「うちでは去年1年間で380~400台ほど売れています。一番売れているのはスイフトとセレリオですね。XL7とエルティガも売れるのですが、競合が多いので大変です。タイではコロナ禍以降、経済が停滞してしまっていますが、中流以上の人々はそれと関係なくクルマを買っています。とはいえ実際のところ、コロナ以前はスイフトがダントツの売れ筋だったところ、コロナ以降はセレリオを買う人が増えていますね」
2024年1月にスズキのタイ法人が発表した2023年のレポートでは、市場低迷や金融機関の規制強化、市場競争の激化で苦戦して、年間の総販売台数は1万2151台に留まった。そのうち最も多く売れたのがスイフトで5570台、次いでセレリオが2497台で、この2モデルで過半数を占めている。
スズキとしては、販売前だけでなくクルマを販売した後のサービスを充実させることをタイでの戦略として最優先してきており、2024年も1万2000台の総販売台数を堅持するとアナウンスしている。
今回訪れたスズキディーラーも、近年タイに続々と上陸している新興EVメーカーの華やかな店構えと比べると正直いって地味ではあったが、ショールームよりもその奥のファクトリーが大きく充実し、ユーザーから預かったクルマで大量のリフトが埋まっていた。そういった地に足のついた自動車メーカーとしての「スズキらしさ」は、タイでもしっかり感じ取ることができたのだった。