日本で売ってないスズキ車がタイにはいっぱい! でも主力はスイフト!
2024年3月27日~4月7日にタイで開催された第45回「バンコク・インターナショナル・モーターショー」(以下バンコクモーターショー)は、12日間で来場者数161万人という盛況を見せました。スズキはEVコンセプトカー「eWX」や3列シートSUV「XL7」のハイブリッド版をお披露目。見どころ豊富なスズキブースの中でAMWが注目したのは、日本未発売のコンパクトカー「セレリオ」です。現地ディーラーも訪れて人気の秘密を聞いてきました。
タイで99台限定販売のジムニーは743万円! XL7ハイブリッドで電動化アピールも
2024年春のバンコクモーターショーにおいて、スズキのブースは数多くのトピックを提供してくれた。メインステージでアンベールされた主役は、2023年10月のジャパンモビリティショーで世界初公開された軽ワゴン型EVのコンセプトカー「eWX」と、東南アジア市場の売れ筋である3列シート7人乗りのクロスオーバーSUV「XL7」のハイブリッドモデルだ。
eWXコンセプトは全長3395mm×全幅1475mm×全高1620mmという軽自動車サイズで、1回の充電で最長230kmの長距離走行が可能なコンパクトEVであり、日本においても市販化が期待されるクルマ。スズキのタイ法人の鈴木忠臣社長はこのように語った。
「今回、私たちはコンセプトカーを発表しましたが、それは単に斬新なクルマというだけでなく、より良い生活のための革新でもあります。スズキは、あらゆる面で消費者の生活の質に注意を払いながら、最高の旅の道具を開発することを決して止めません」
かたやXL7はインドネシアで生産される3列シートのクロスオーバー車で、三菱「エクスパンダー」を筆頭に、東南アジアでは競争の激化しているカテゴリーのクルマだ。これにもハイブリッドモデルを導入することで、電動化への圧力を強めるタイ政府とタイ市場へのアピールとする意図がありそうだ。
日本人にとってなじみ深い「ジムニー」が99台限定でタイで販売されるのも見のがせないポイント。なお「99」はタイでは発展するという意味のある縁起のいい数字とのことだ。じつは2023年にも50台限定でジムニーをタイ発売しており、それが好評だったことを受けての2024年の増枠という次第だ。しかし台数が少なすぎるのでは? と思いきや、ジムニーのタイでの販売価格は176万バーツ(約743万円)から! ASEAN域外である日本からの輸入車扱いで関税が超高額に設定されるためで、さらに最近の円安もあり、我々にはとくに高く感じられてしまう。いずれにせよ富裕層向けの趣味グルマといった存在だが、それでもバンコクモーターショー開催期間内に申し込み枠は埋まってしまったようだ。
バンコク市内のスズキディーラーを直撃してみた
バンコクモーターショーのスズキブースには他にも見どころが多かった。XL7同様に3列シート7人乗りミニバン「エルティガ」にも「スマートハイブリッド」が登場。また、日本でも販売されていた「SX4」の後継となるセダン「シアズ」や、2019年からインドネシアで生産されている東南アジア仕様「キャリイ」(日本の軽トラとは別物)の移動ネイルサロンも展示されていた。
そんな中、日本でも売れるかも? と思わせる小ぶりでちょっとお洒落なコンパクトカーが「セレリオ」だ。インド生産でボディサイズは全高3600mm×全幅1600mm×全高1540mmでエンジンは直列3気筒1000cc。スズキのインドにおける主力車種「アルトK10」とほぼ同等のスペックで、タイにはこちらのセレリオだけ導入されていて、スイフトの弟分といった存在となっている。現行型セレリオは2021年に導入された3代目で、20km/Lの低燃費と、33万8000バーツ(約143万円)という低価格が売りだ。
バンコクモーターショーの取材の後、空き時間にバンコク南西部の国道沿いにあるスズキディーラーに飛び込んで、最近のタイでのスズキ車のトレンドを聞いてみた。「Suzuki D4CarCity」という、スズキディーラー歴31年の老舗だ。応対してくれたのは創業した親から店を引き継いだという若き2代目オーナーさん。
「うちでは去年1年間で380~400台ほど売れています。一番売れているのはスイフトとセレリオですね。XL7とエルティガも売れるのですが、競合が多いので大変です。タイではコロナ禍以降、経済が停滞してしまっていますが、中流以上の人々はそれと関係なくクルマを買っています。とはいえ実際のところ、コロナ以前はスイフトがダントツの売れ筋だったところ、コロナ以降はセレリオを買う人が増えていますね」
2024年1月にスズキのタイ法人が発表した2023年のレポートでは、市場低迷や金融機関の規制強化、市場競争の激化で苦戦して、年間の総販売台数は1万2151台に留まった。そのうち最も多く売れたのがスイフトで5570台、次いでセレリオが2497台で、この2モデルで過半数を占めている。
スズキとしては、販売前だけでなくクルマを販売した後のサービスを充実させることをタイでの戦略として最優先してきており、2024年も1万2000台の総販売台数を堅持するとアナウンスしている。
今回訪れたスズキディーラーも、近年タイに続々と上陸している新興EVメーカーの華やかな店構えと比べると正直いって地味ではあったが、ショールームよりもその奥のファクトリーが大きく充実し、ユーザーから預かったクルマで大量のリフトが埋まっていた。そういった地に足のついた自動車メーカーとしての「スズキらしさ」は、タイでもしっかり感じ取ることができたのだった。