トヨタのトップガンとラトバラがニュルのレースに参戦した理由は?
トヨタ「GR」シリーズの味づくりの根底には、ニュルブルクリンク耐久レースがあります。人を鍛え、クルマを鍛える場所として、ニュルとGRは切っても切れない関係にあるのです。今回そこに、1台の「GRヤリス」が持ち込まれました。ドライバーも車両も謎だらけ……。果たしてこのGRヤリスの目的は何なのでしょうか。
レーシングカーでありながらカラーリングなし!
2024年4月5月~7日に開催されたニュルブルクリンク耐久シリーズ(NLS)に、なにやら不思議な「 GRヤリス」が登場し興味を引いた。それもそのはず、レーシングカーにはつきもののカラーリングが施されておらず、ホワイトボディそのままにゼッケンが張り付けられたからだ。
しかもそれを操るのはヤリ-マティ・ラトバラ! 世界ラリー選手権(WRC)の世界最多記録を持つ大ベテランドライバーであり、2023年からはTOYOTA GAZOO Racing WRTの代表を務め、ラリーファンにはたまらない崇高な存在の彼が、一体ニュルにどうして?
また、トヨタ自動車のトップガンのひとりで、毎日のようにIP(インダストリープール)でトヨタ車を駆り走り込むヘルヴィッヒ・ダーネンスも加わった。彼は足まわりの設定のスペシャリストであり、「スープラ」の開発にも尽力した立役者でもある。これに地元ニュルブルクリンク近郊にあり、「GRスープラGT4」でレース参戦するチームのオーナーを務めるウーヴェ・クレーンが乗り込んだ。
トランスミッションはGR-DAT仕様かと思いきやMT仕様
VT2-R+4WDクラスから参戦した「謎」のGRヤリス。しかもエントリーは「TOYOTA GAZOO Racing WRT CR」とあり、チームピットで作業する真っ赤な作業着の集団がトヨタワークス感を醸し出し、なにやら物々しい。現場にいた関係者によると、「詳細は明かせない」としつつも、「量販車の改良」のためとだけ教えてくれたが、それ以外は車両についてのインフォメーションは全く不明。ボディデザインは現行のGRヤリス、そしてトランスミッションは次期新型GR-DATかと思いきやMT仕様だった。
今回のニュルへの参戦目的は、タイムを競う、上位入賞を目指すというものではなく、あくまでレースを通して「量販車の改良」を目的とし、足まわりを中心に各パーツを事細かくデータ取りをしていたように感じた。いずれにせよ、この週末にニュルの実戦を通して得たものは、なんらかの形でGRヤリスにエッセンスが注入されることになるだろう。果たしてそれが数年後に発売されるGRヤリスなのか、もしくはGRMNなのか、それともニュルエディションなるものが出るのか、期待が膨らむ。
ラトバラ目当てのラリーファンであふれかえった
WRC界の大物の参戦だけに、つねにピット前はラリーファンであふれかえっており、その人気ぶりは健在だった。このGRヤリスとラトバラのコンビでのニュル24時間レースの参戦は予定されていないというが、この日のテスト参戦が今後どのような形で活かされるのか、楽しみに待ちたい。
ヤリ-マティ・ラトバラのコメント
「このニュルの耐久シリーズを通してTOYOTA GAZOO Racing WRTはGRヤリスの開発プログラムを行い、かなり良いフィードバックを得られて満足しています。私自身はノルドシュライフェでとても楽しくGRヤリスをドライブすることができました。ラリーテイストの要素があるコースなので、ラリードライバーとしてこのノルドシュライフェに関しては、初めてここを訪れるGTドライバーに比べたら、少しだけイージーな感じでドライブできたのかなと思っています」