磨きがかかった「マクラーレンらしい走り」
コースへ出て右足に軽く力を入れた瞬間に「あ、速い」と感じた。そこから踏み込んでいくとあっという間に100km/hを超え、200km/hに達する。その間、車体は凄まじく安定しており、不安など皆無。焦ることがない。加速の一瞬一瞬をじっくりと感じることができる。その結果として、あまりの速さに恐怖を覚えた。
スリリングな加速の結果、不安が高じて怖いと思うのではないのだ。瞬間を感じる余裕があるからこそ、どこまでも伸びる加速に恐怖するとでも言おうか。MAGARIGAWAの下りストレートで軽く250km/hを超えていく。
印象的だったのは加速中よりも3割増しで減速中の方が安定していたことだ。車体の軽さと空力(ガバッとリアウイングが立つ)を生かした制動の確かさはロードカー最高レベルである。
旋回中の手応えも確かなもので、両手とタイヤがダイレクトにつながっているような印象を受ける。ステアリングホイールの触り心地が抜群なこともあって上半身は前輪と一体となり、逆に下半身は良くできたシートと強靭なボディのおかげで後輪と一体となる。要するにこのマシン最大の魅力は、ドライバーを介して前輪と後輪とが一体となる感覚を提供する点にこそあった。
感動的だったのは、MAGARIGAWA名物の上り急勾配で狙ったラインを思い通りにトレースしつつ右足の強弱ひとつでメリハリのあるコーナリングを楽しめたことだ。これはもうライトスポーツカーの領域だと思う。パワーウェイトレシオと前後重量配分にこだわって作られたカーボンシャシーのスポーツカーならではというべき、それは走りであった。
最後に。720Sに比べて随分とサウンドが耳に心地よい。単なる爆音ではない。右足の動作を制御する神経に直接響く音だった。