日本未上陸の中国メーカー、GWM=長城汽車
タイでは政府による強力なEV優遇政策のもと、ここ数年で中国メーカーが続々と自動車市場に参入。タイ国内の新車販売台数で中国勢のシェアは2022年の約5%から2023年は11%へと急成長を果たしました。そんなバンコク市内で目立っていたのが、GWM(長城汽車)の丸目でかわいいコンパクトBEV「オーラ グッドキャット」です。AMW取材班は現地のGWMディーラーへ飛び込み取材を敢行し、タイでの新興勢力としての現状と戦略を聞いてきました。
2024年1月からはタイでのEV生産が正式スタート、さらなる攻勢へ
タイでいま急速にEVのシェアが増えているのは、タイ政府のラディカルなEV優遇政策によるものだ。タイ国内にEVの生産拠点を将来的に整備することを条件に、EV購入時に補助金を支給するとともに、輸入時の関税も最大で4割引きするという内容で、BYDなど中国メーカーを中心に10社以上がタイ政府と覚書を結んでいるのだ。
その結果、2023年のタイ国内のEVの新車販売台数は前年比およそ7倍の約7万4000台を記録。そのうち4割強の約3万台を中国のEV最大手BYDが販売している。
今回、2024年3月27日~4月7日に開催された第45回「バンコク・インターナショナル・モーターショー」(以下バンコクモーターショー)の取材のためにバンコクを訪問した際も、BYDをはじめとした中国メーカー製のクルマやディーラーを見かける頻度がじつに高かった。
そんな中でもひときわ目についたのが、「GWM」(Great Wall Motor=長城汽車)。コロンとした可愛いシルエットに丸目ヘッドライトとポップなボディカラーを与えられたコンパクトBEV「オーラ グッドキャット(Ora Good Cat)」はバンコク中心部でも高速道路でも目立っていた。また、バンコク有数の商業エリアであり、日本でいえば渋谷や原宿に相当するサイアム・エリアでは、GWMの充電ステーションが通り沿いにドドンと構えていたのだった。
EV専門メーカーのBYDとは異なり、GWMは中国本土ではガソリン車からEVまで幅広くラインアップしているメーカーだ。タイ市場には2021年から参入し、EVとハイブリッド車の販売に絞って「xEV」の自動車ブランドとして活動している。「xEV」とはバッテリーEV、ハイブリッドEV、プラグインハイブリッドEV、フューエルセルEVなどを包含した、いわゆる「電動車」を指す言葉だ。
GWMタイ法人のレポートによれば、2023年のタイでの新車販売台数は1万2840台で、上陸以来の累積では合計2万8158台。このうち最も売れているのが上述のオーラ グッドキャットで、累計1万820台が売れてタイ国内を走っているのだそうだ。さらに2024年1月から、タイ国内に設立したGWMのEV工場でオーラ グッドキャットの生産がスタート。これから本格的にタイの街角に増えていくことになりそうだ。