着目すべきポイントは新たな“味”の提案である
スバル「BRZ」はアプライドCになってMTにもアイサイトが装着されるようになりました。ただ今回の一部改良/C型へのアップデートはそれだけではありません。大きなポイントは、それぞれの乗り味の変更とBRZの新グレードの追加です。最新モデルとなった両車の魅力を山本シンヤさんが語ります。その評価はいかに?
(初出:XaCAR 86&BRZ magazine Vol.043)
MTにもアイサイトが標準装備されたのが大きなニュースだ
共同開発モデルでありながら、初代以上に走りの“独自性”が与えられているGR86とスバルBRZ。前回の改良(B型)は微々たる変更だったが、今回(C型)はMTモデルへのアイサイト搭載が大きなニュースとなっている。MT用アイサイトはAT用に対して誤発進/誤後進抑制機能や後退時ブレーキアシスト機能の非採用、アダプティブクルーズコントロール(ACC)は2~6速かつ30km/h以上で作動、プリクラッシュブレーキ(PCB)作動時のブレーキ保持が約3秒といった機能差はあるが、プロドライバー並みの滑らかでシームレスなACC制御、誤作動なく「絶対に止まる」と思えるPCBの信頼性などを含めて、アイサイトの名に偽りなしの性能だ。
変更項目のおさらいをしておくと、GR86はスロットル/VSCの制御変更に加えて、初代にも採用されたZF(SACHS)製ダンパー&ブレンボブレーキをオプション設定する。スバルBRZは専用内外装に加えて、フロントに日立アステモ製SFRDダンパーの専用サス&ブレンボブレーキを標準設定した新グレード「STIスポーツ」を追加設定。オプションと新グレード、考え方は異なるものの、共通するのはベース車に加えて、新たな“味”の提案だ。
GR86とBRZそれぞれのアプローチが違うので、選ぶ楽しさが増したと言える
まずはGR86だ。パワートレインはメリハリのあるスロットル設定が特徴だったが、それが故に「日常域での微細なアクセルコントロールが難しい」という声も。そこで新型はリニアな特性(といってもBRZよりはメリハリはある)に変更。乗り比べると豪快さは若干薄れた感じはあるが、懸案のコントロール性改善に加えて、エンジンの伸び感が増した印象を受けた。
VSC変更は公道試乗のため試していないが、制御をより安心/安全方向(=より早いタイミングで介入)に変更。OFF/トラックモードを持つからこそ、VSCとしての機能をより明確にしている。安心・安全という意味では正しい方向だ。
走りの変更はどうか? ベース車に対して雑味が取れて、よりスッキリしたステア系と操舵に対するノーズの入り方にいい意味で“間”がプラス。それに加えてより4輪で曲がる感覚が強められたことで、FRスポーツカーを強調したメリハリがあるハンドリングとなり、「心地よいダルさ」がプラスされた印象だ。
乗り心地はカドが取れたマイルドな入力とストローク感がプラス。スポーツカーらしい引き締まった乗り心地ながら乗員が揺さぶられにくくなっており、結果として快適性はアップしていると感じた。ブレンボブレーキはカチッとしたタッチや応答性の良さ、踏力コントロールのしやすさ(特に抜き側)が印象的で、日常域でも安心を実感した。