原付カー趣味を通じて再び前向きな気持ちが湧き起こった
そんな失意の中村さんを救ってくれたのが、小さな原付カーだった。友人が左半身だけで運転できるように改造してくれたミツオカ「MC-1」のドライブをきっかけに再び前向きな気持ちが湧き起こり、リハビリと並行してさまざまな原付カーを中古車店や個人売買で手に入れて整備やレストアを行い、また各地のイベントにも積極的に参加。原付カーを通じて同じような趣味嗜好の仲間も増え……といった具合だ。
「さすがに歳も歳だから、ここ最近はけっこう断捨離してます」
という中村さんのガレージ&工房だが、それでもなお、おびただしい数の原付カー(と、そのパーツや残骸?)がみてとれる。
そしてそれらの中でもひと際目を引いた1台が、今回ご紹介する小さな「セブン」だ。原寸大(=本物の)セブンもそのシンプルな構造から類似のスポーツカーが各国で作られたが、これはさらにそれら実物の3/4程度に縮小された、いわば公道を走るスケールモデルである。
自分専用仕様に仕上げた「セブン50」はナンバー取得済み
やはりこの趣味を通じて知己を得た、レース車両製作のスペシャリスト「ノーチラススポーツカーズ」にオーダーして制作されたベース車両を、中村さんが自身の工房で自分専用仕様にカスタム&モディファイを加え完成させたのが、この「セブン50」である。
エンジンやサスペンションなどには中国製小型バギーのパーツが巧みに流用されており、もちろん原付カーとしてナンバーも取得済みで公道走行も可能だ。
元ネタとなった「原寸大」のケータハム「セブン」は今でも新車で販売されているが、思い起こせばそのルーツとなったロータス「マーク6」や「セブン」はその多くが完成車としてではなくキットフォームで販売され、ユーザーが自分の好みの仕様に仕上げていったという歴史がある。「クルマはマーケットに向けたビジネスなどではなく、ごく私的な趣味であり人生そのもの」。そんな英国バックヤード・ビルダーの生き様にも通じる中村さんとセブン50の幸せな関係、そして素晴らしき原付カー人生なのだった。