SLS AMGはエンスー向きのメルセデス・ベンツ!
当時の「SLクラス」には、高級スポーツタイプとして「AMG」があった。それらのオーナーの中から、よりスポーツ能力の高いモデルを求める選りすぐりの腕自慢のために、SLS AMGが加わった。
メルセデス・ベンツは以前から着々とこのために準備を重ねてきたが、じつはすでに「AMGドライビングアカデミー」構想を立ち上げていた。SLS AMGが登場したことで、それが早速、本格実施されたのである。
その講習内容は、一流インストラクターによる車両紹介、レーシングタクシー(デモ運転)でSLS AMGの究極の性能を知り、さらにサーキットで自らハンドルを握って直接有益なアドバイスを取得できる、極めて魅力的なものとなっている。そう、心にマニアックな火を燃やしてくれるモデルなのだ。
徹底的にこだわるべくコストを惜しみなく投入
SLS AMGにおける走行性能へのこだわりを雄弁に物語る要素のひとつが、完全なドライサンプ方式による潤滑システムを採用したSLS専用の6.3Lエンジン「M156」をSLS用に設計しなおした「M159」により、車体にどのような方向からのGがかかってもエンジンオイルの潤滑ができることである。
つまり、極端に言えば前後/左右/上下のGに対して航空機のようにエンジンを上下逆さまの状態で回転させてもオイル切れを起こすことがない。非常に強い前後&橫Gのかかるレーシングカーやサーキット走行をも想定したスーパースポーツカーには非常に有効な方式である。
今まで記述してきた通り、このSLS AMGは、スーパースポーツカーであるがゆえに、能動的安全性の走行安全である「走る性能・曲がる性能・止まる性能」や受動的安全性に最新の安全技術とコストが惜しみなく導入され、トータルバランスのとれた高性能車に仕上がっている。
AMGが3年の歳月をかけて開発したエンジンは言うまでもない。このエンジン以外では、アルミニウム・スペースフレーム、リアにトランスミッションを置くトランスアクスル・レイアウト、カ-ボン製のドライブシャフト、SLS専用のブレーキなどにも惜しみなく最新の安全技術とコストが投入されている。
さらに、ボディ骨格がフルアルミニウムで構成されていることにより、骨格部分の重量が241kgと極めて軽量なこと。また、軽量にもかかわらず、メルセデス・ベンツならではの高い安全性・強度・耐久性を誇っている。受動的安全性を考慮し、Aピラー骨格には超高強度スチール・極超高張力鋼を採用。万一の事故や横転時にも高い強度のルーフやキャビンで乗員を守ってくれる。
* * *
伝説のメルセデス・ベンツ300SLを彷彿させるこのSLS AMGは、当時の競合車と比較しても比類のないパフォーマンスを備え新たな伝説を生み出した、メルセデス・ベンツとAMGが贈るガルウイングスポーツカーだ。当時のバリエーションもロードスター、SLS AMG GT3、SLS AMG E-Cell、SLS AMG GT、限定生産のブラックシリーズやファイナルエディションと拡張しながらも、SLS AMGは2014年に生産を終了し、後継は同年秋に発表された「メルセデスAMG GT」に受け継がれたのだ。