国際マーケットでは高値安定中?
かくしてフェラーリとしては初の量産ハードコアモデルとなった360チャレンジ ストラダーレは、インテリアでは360モデナのオプションであるカーボンファイバー製シートを標準装備し、意外と重量のかさむ本革レザーをアルカンターラに、ドアウインドウもレキサン樹脂製に変更することもできた。またオーディオシステムも、注文主の意向次第で軽量化のため非装備とすることも可能になっていたという。
いっぽう、フェラーリが最終的に製造した360ベースのチャレンジ ストラダーレは1300台にも満たず(1288台説が濃厚)、そのうち378台が北米仕様となったとされているが、今回のRMサザビーズ「MIAMI 2024」オークションに出品された360チャレンジ ストラダーレは、その希少なUSスペックを持つ1台とのことである。
カラースキームは、チャレンジ ストラダーレではデフォルトカラーだった朱色がかった赤「ロッソ・スクーデリア」ではなく、フェラーリの伝統的塗色である赤「ロッソ・コルサ」のエクステリアに、レッド/ブラックのアルカンターラ張りインテリアの組み合わせ。また、同じくチャレンジ ストラダーレを象徴していた、イタリア国旗の三色旗をイメージしたオプションのストライプ塗装もこの個体には施されていないなど、節度のある雰囲気を重視したかに見える。
また、正規ものの北米仕様であるため、EUマーケットなどでは選択可能だったレキサンウインドウではなく、通常のガラス製サイドウインドウを持つかたわら、左右のフロントフェンダーにはサーキット由来のモデルであることを誇示する「スクーデリア・フェラーリ」の盾型エンブレムを装着。また、CDプレーヤーつきHi-Fiラジオ、カーボンファイバー製ドアミラー、「ロッソ・コルサ」仕立てのブレーキキャリパー、消火器などの装備が選択されている。
アメリカ合衆国上陸後にはカリフォルニア州に新車として納車され、RMサザビーズ公式ウェブカタログ作成時の走行距離はわずか9507マイル(約1万5200km)。またオークション落札者には、純正ツールキットやオーナーズブックセット、真紅の純正ボディカバーなどが添付して引き渡されることになっていた。
2003年のデビューの際、360チャレンジ ストラダーレはマラネッロのレーシング愛好家の間で瞬く間に「クラシック」となったことは記憶に新しい。でも、デビューから20年以上を経過した現在においても、フェラーリ・クラブのイベントや「スーパーカー・サンデー」、あるいは最近では日本国内でも開かれるようになった「カー&コーヒー」型ミーティングなどの参加には理想的なこのモデルで、しかも低走行距離で望ましいファクトリー純正スペックの個体は、ますます入手が難しくなっているとのこと。
そのため、この360チャレンジ ストラダーレのオークション出品は、フェラーリ最高の1台を手に入れる絶好の機会となったのは間違いあるまい。
このフェラーリ360チャレンジ ストラダーレにRMサザビーズと現オーナーが設定したエスティメート(推定落札価格)は、30万~40万ドルという、なかなか強気にも映る金額。しかし、実際の競売でも31万3000ドル、日本円に換算すると約4750万円というけっこうなプライスで、競売人のハンマーが鳴らされることになったのだ。
ここ数年、20万ドルから30万ドルあたりで推移していたチャレンジ ストラダーレの国際相場は、2023年あたりにはいささか沈静化の傾向も見られた。しかし今回の大商いから判定すると、たとえ時おりの上下はあろうとも、基本的には高値安定が続いているということなのであろう。