自らの手でサーキットを駆け抜けるマシンを製作
ひと口に旧車好きと言っても、求めるスタイルは人それぞれ。オリジナルで楽しむオーナーもいれば、絶対的な速さを求めてチューニングに励むオーナーもいることでしょう。今回紹介する日産C110型「スカイライン」こと通称「ケンメリGT-Rレーシングレプリカ」を所有する北川 洋さんの旧車ライフの始まりは、今から26年前に遡ります。
幻の名が付くマシンとは
日産「スカイライン」の輝かしい歴史を振り返れば、伝説と呼ばれたマシンは数多く存在する。しかし幻の名が付くマシンは、1972年に開催された東京モータショーにおいて参考出品された「スカイラインハードトップ 2000GT-Rレーシング」(以下、ケンメリGT-Rレーシング)だけといってもいいかもしれない。
モースポーツ界においては、49連勝を記録して語り継がれる「ハコスカGT-R」の次世代モデルとして発表された「ケンメリGT-Rレーシング」の活躍に誰もが期待し胸踊らされた。そのルックスは、大きなチンスポイラーとワークスフェンダーを備え、ゴールドストライプのレーシングマシンと完全に仕上がっていたので、サーキットでの活躍を誰もが疑わなかった。だが、悲運にも時代がケンメリGT-Rレーシングのデビューを阻み、その姿は一度もサーキットで見ることなく幻のまま幕引きとなってしまった。
北川 洋さんは、そんな幻のマシンに憧れを抱き、自らの手でサーキットを駆け抜ける「ケンメリGT-Rレーシング」を作ろうと決意。
「思い起こせば、今から26年前の話になるかな」
と当時を思い出す。
さすがに本物の「スカイラインGT-R」は買えないため、解体屋に行って状態が良さそうな車体がないかを物色。そこでたまたまたまたま見つけたのが、このC110型「スカイライン」だった。幸運なことに、ボンネットを開けてみると、エンジンはL28SUキャブレターを装着し、トランク内にはインマニとφ44ソレックスが転がっていたのだ。
価格的にも予算内だったので購入し、まずは走れるように修復スタート。ケンメリといえば不良が乗るクルマの代名詞なだけに、購入直後はサスペンションをカットして車高短仕様にして、レーシングタイヤを履かせた街道レーサー気取りのマシンとして制作。ちょっとヤンチャなリメイクを楽しんだ時期もあったという。