シビックにスポットを当てたホンダブース
2024年4月12日〜14日に千葉県・幕張メッセで開催されたAUTOMOBILE COUNCIL(オートモビルカウンシル)にホンダは3台の「シビック」を展示。会場には初代RSと全日本ツーリングカー選手権で活躍したシビック、今秋発売予定のシビックRSプロトタイプが並びました。新旧のシビックたちを紹介します。
クイックなハンドリングが気持ちよかったRS
2024年4月12日〜14日に開催されたオートモビルカウンシル。深紅の大きなボードに「HONDA」のロゴと「DNA」の3文字が白抜きされた看板が目立つホンダのブースでは、マニュアル・トランスミッション(MT)を操作してスポーティなドライビングを楽しむMTスポーツをテーマに、3台の「シビック」が展示されていました。
1972年に登場したシビックはホンダで最も長い歴史を持つブランドで、2021年に登場した現行モデルは11代目となっています。今回は初代モデルに追加設定された1975年のシビックRSと1987年にチャンピオンとなった3代目モデルのレース仕様、そして2024年秋発売予定、現行モデルのシビックRSのプロトタイプが紹介されていました。
1974年に登場した初代のシビックRSは、スポーティモデルだったGLをベースにツインキャブを装着し、カムを変更するなどして69psから76psにパワーアップ。同時にGLの4速MTからシビック初の5速MTに変更されサスペンションも強化されました。さらにホイールも13インチにサイズアップされるなどシャシー性能も引き上げられています。
1.2Lで76psという最高出力は、現在では平凡な数値ですが、当時としてはクラストップレベルの「ハイパワー」でした。車両重量は2ドアが695kg(3ドアは705kg)と軽かったことが最大の美点で、さらに車両サイズが全長3650mm×全幅1505mm×全高1320mmとコンパクトだったことも大きな美点となっていました。
ちなみにRSはレーシング・スポーツの略ではなくロード・セーリングの略。運輸省(当時)に配慮してのネーミング、との説もありますが、じつは実際にレーシング……と名付けるに相応しいモデルも開発していたとLPL(ラージ・プロジェクト・リーダー)だった木澤博司さんから聞いたことがあります。個人的には2年間余分に通った学生時代と学生気分の抜けない社会人の初めに乗っていましたが、クイックなハンドリングが最高に気持ちよかったことを覚えています。
じつはまだ学生だった頃、西日本サーキットのF2レースを取材した際に、今宮 純さんから高橋国光さんと一緒にホテルまで送ってほしいと頼まれたことがありました。それだけでも感激だったのですが、国光さんから「ちょっと運転させてくれる」と頼まれ助手席に移動、「国さん」のドライビングをサイドシートでインプレッションさせてもらいました。国光さんに「ホンダのクルマって、運転していて楽しいよね」と話しかけられ少し上ずった声で「はい……」と答えたのは忘れられない想い出。「軽量コンパクトは永遠の正義」を実現した1台であったのは間違いないです。
JTCで6戦6勝と圧倒的な強さを誇ったシビック
シビックは多くの世代がツーリングカーレースで活躍したことも大きな特徴でした。なかでも注目を浴びたのはグループA(Gr.A)規定で戦われた全日本ツーリングカー選手権(JTC)での活躍です。シビックのJTCデビューは1985年のJTCシリーズ第3戦の西日本サーキット。
第2戦の筑波サーキットでグループN仕様をベースにしたクルマが参戦していましたが、無限(現M-TEC)がチューニングしたフルGr.A仕様は西日本でデビュー。中嶋 悟さんと中子 修さんという「掟破り」のコンビで登場し、中嶋さんが早速ポールポジションを奪取したのです。
決勝レースでは燃料計のトラブルでリタイアに終わっていますが、続く第4戦の鈴鹿ではポールポジションからスタートし、BMWの「635CSi」を相手にトップ争いのバトルを繰り広げた末に初優勝を飾っています。今回展示されていたクルマは1987年シーズンのJTCに参戦した競技車両そのもので、中子さんと岡田秀樹さんの名コンビで6戦6勝と圧倒的な強さを見せてチャンピオンに輝いた1台です。
秋に発売予定の最新シビックRSのプロトタイプも
ホンダの、MTスポーツへの拘りを解説した展示パネルの前に展示されていたのは今年の秋に発売予定となっている現行(11代目)シビックRSのプロトタイプです。1月の東京オートサロンでお披露目された後も、幾つかのイベントで紹介されてきましたが、プロトタイプとあって詳細は未発表となっています。
ベースとなった現行シビックは、それをシビックと呼ぶのが相応しいかは意見の分かれるところですが、1台のクルマとして見ると高い評価が与えられるモデルです。そんな1台を、ホンダ(の研究所)が精魂込めて開発し、RSのバッジを付けたからには楽しいクルマになっているのは間違いないでしょう。